トランプ次期大統領は日本株の「敵」ではない 「米国第一主義」は日本にとっても「追い風」

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11日のNYの為替市場では、ドル円が116円87銭まで上昇した後、114円25銭まで下落した。一方、日経平均先物は1万9510円まで上昇した後は1万9120円まで下落した。12日の日本市場では一時113円台まで円高が進んだ。ただ、トランプ氏からすれば、「20日の就任式を前に具体的な政策内容を話すわけがなく、市場が勝手に期待しただけだ」との認識だろう。

米国株高なら、日本株の需給も良好に

20日に予定されている就任式での演説テーマは「Dream Big(米国人よ、大きな夢を見よう)」である。「米国を再び偉大な国とする」ことを大前提にしているわけだから、米国が不利となるような政策は取らないというだろう。

「保護主義」によって物価が上昇し米国民が困る可能性はなきにしも非ずである。それでも、「米国第一主義」で米国企業が潤い米国株高が続くとなれば、それは日本株への追い風となるのではないか。結局、日本株を支えている外国人投資家のお膝元が安定していれば、日本株自体の需給環境は良好となる。

昨年は1月から、原油価格急落に伴いオイルマネーが日本株を大幅に売り越したことは記憶に新しい。「原油価格の下落は日本企業の追い風」といったロジックは正しいが、「原油価格の下落で業績が改善するから日本株が上がる」というロジックは間違いだ。海外投資家のお膝元の安定化は、外国人投資家頼みの日本株からすると重要なポイントとなろう。

東京証券取引所が発表する投資主体別売買動向では、外国人投資家は8週連続で日本株を買い越している(現物+先物)。とりわけ、12月(12月5日-30日)は、225先物を764億円売り越しているが、TOPIX先物は4490億円買い越している。

ブローカー別では、米国大手投資銀行ゴールドマン・サックスのTOPIX先物買いが非常に目立つ。1月11日時点の推測ベースで、同社は7.5万枚ほどの買いポジションを構築している。このポジションの期限は3月10日までである。大まかな戦略を挙げると、3月限から6月限に乗り返るか、全てを決済してしまうか、先物から現物株に置き換えるかのどれかを選択することだろう。

225先物を手掛ける投資家は短期的な売買と見られるが、TOPIX先物を手掛ける投資家は比較的長い期間投資する傾向がある。米国株の安定は、こうした良質な投資家の資金が日本株に流入する礎となるだろう。「米国第一主義」を掲げるトランプ次期米大統領は、決して日本株の敵ではない。むしろ「ウェルカム」な存在である。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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