トヨタ「86」 今さら乗ってみた 発売1年の軌跡、日本のスポーツカーは今
これは、トヨタが「86」の発売時から、「スポーツカーをソフト面で楽しんでもらい、カルチャー(文化)をつくる」(トヨタマーケティングジャパン・スポーツカーカルチャー推進グループの喜馬克治氏)というコンセプトで進めてきた「スポーツカーカルチャー構想」で用意されたプログラムの一つ。ラジオパーソナリティやディスクジョッキー(DJ)のほか、自動車雑誌などへの寄稿もしているピストン西沢氏が講師を務め、約20人の受講生が2台の「86」へ順番に乗り、およそ3時間に渡って、「アクセルターン」などのドライビングテクニックを体験するという内容で、昨年12月に開始。これまでに複数回開催している。
「86」オーナーでなくても、MT車を問題なく扱える運転技術を持っていれば、誰でも参加できる。参加者は30~40代前後の男性が多く、「86」オーナーもいるが、そうでないクルマのオーナーのほうが多い。1万0500円の参加費は決して安くないが、リピーターも少なくない。
記者は昔、MT仕様のFR車に乗り、少しならテールが滑る「テールスライド」という状態を経験したことがあるが、アクセルターンのようにクルマを一気に反対方向まで滑らせたことはさすがになかった。人生初の体験である。「自分は『86』オーナーだが、公道ではこんなことはできない」とイベントに参加した40歳の男性は話した。ピストン西沢氏が言うように、「モータースポーツのテクニックを学ぶことで、公道での危険回避に役立つ」側面はあるだろう。
発売1年で2万6000台を販売、当初目標を軽くクリア
トヨタは発売から約1年となる今年3月末までに、国内で累計約2万6200台の「86」を販売している。月間平均にならすと約2200台。発売時目標の月販1000台を軽くクリアして、当初の想定を大きく上回っている。年間20万~30万台を売るようなハイブリッド車(HV)「プリウス」「アクア」などと比べると、「86」の台数そのものは決して多くはないが、トヨタが10数年ぶりに投入した新型スポーツカーとしては、一定の成果を収めていると評価していいだろう。
それに一役買っていると言えるのが、「スポーツカーカルチャー構想」だ。記者が参加した「コントロールテクニックプログラム」は、一般の道路や駐車場とは切り離された空間だからこそ、可能になるイベントだが、それでも「お台場で、こんなことができるなんてすごいこと。日本の自動車メーカーでここまでやった企業はない。『86』の啓蒙に一役買っているだろう」とピストン西沢氏は評する。
スポーツカーカルチャー構想では、「86」で走ってみたいというコンセプトで、日本中の「峠」を厳選し、ドライバーを集めて走る「峠セレクション」なども展開。「峠セレクション」は実際に数千人単位を集め、ネットではSNSなどのコミュニティにも発展しており、トヨタも側面支援している。