「スピーディ」「ながら飲み」「腹持ちのよさ」というキーワードに「ほっと一息できる」というベネフィットを加えた訴求ポイントが整理されたが、そこから単純な飲料ではなく、デザートの特徴を取り込んだ独自の商品として展開する可能性を追求することとなった。実は、商品開発のチームは市場自体が飽和している「飲料」ではなく、成長余地のある「デザート」のチームが主管しているのである。故に、ブランドネームも単純な「コーヒーゼリー“飲料”」などではなく、新カテゴリーを表すような従来にないゆえインパクトのあるアンブレラネームを必要とした。
差別化ポイントは「固体と液体が程よく混ざったとろり濃厚食感」であると整理され、そこから「ドロリッチ」というネーミングが検討された。「ドロ」という食品らしくないネガティブな語感が含まれるネーミングは、社内からの猛反対を受けた。しかし、他社の類似商品との明確な差別化のために、開発チームは社内の幹部までを丹念に説得し、ネーミングを押し通したのである。
■2011年-転機、そして新製品の投入へ
ドロリッチは2007年10月に九州地区から徐々に限定発売のエリアを広げ、09年には一大ブームを巻き起こし、市場を席巻した。2008年6月2日の日経新聞はPOS情報を分析する「店頭商品浮き沈み」欄「チルドコーヒーゼリー」カテゴリーで、「『ドロリッチ!』首位独走」とすでにその快進撃を伝えている。同時点での発売エリアは九州、関東のみであったにもかかわらず「1位はグリコ乳業の飲むタイプのカフェゼリー『ドロリッチ!』で、シェアは19.6%。(中略)同社のメーカーシェアも約15ポイント押し上げ、日本ミルクコミュニティを抜いて首位に立った」。
しかし、翌10年から徐々に売り上げは右肩下がりになってきた。理由は明確だ。PB(プライベートブランド)の拡大で棚が狭められたことと、他社のタピオカ飲料など「食感飲料」としての競合の出現である。手作りスイーツブームで消費者の舌が肥えてきたことも原因だ。購入者数、購入回数とも減少傾向が明らかになってきたのである。
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