日本触媒の爆発事故 2つの「集中」の果て
日本触媒の姫路製造所から立ち上った禍々しい黒煙が、世界の紙おむつを大ピンチに陥れた。
爆発事故を起こしたのは、アクリル酸の製造プロセスの中の中間貯蔵タンク。アクリル酸は紙おむつの“元”となるSAP(高吸水性樹脂)の主原料だ。同社はSAPで3割のシェアを握る世界最大手。アクリル酸も市場の15%を押さえている。
日本触媒の池田全徳社長は「他社に融通を要請しているが、製造中止が長引けば、(世界的に)不足を来すことは十分考えられる」と言う。
ピンチは紙おむつだけではない。日本のモノづくりの成功モデルがまた一つ、根底から揺らいでいる。
皮肉なことに、日本触媒の姫路製造所は「最も事故から遠い工場」とみられていた。アクリル酸は重合反応を起こしやすく、扱いを誤れば反応が暴走する。直近では2009~10年、ドイツのBASFはじめ世界のアクリル酸大手の工場が軒並みトラブルに見舞われ、操業度が急降下した。唯一、正常操業を維持していたのが、姫路製造所だったのだ。
このとき、アクリル酸エステル(アクリル酸とアルコールを反応させて造る中間製品)の市況は1トン1050ドルから3000ドル近辺にハネ上がった。市況高騰の恩恵を独り占めする形になった日本触媒は10年度、倍増の309億円の経常利益を計上し、最高記録を書き換えている。