四〇〇万企業が哭(な)いている 石塚健司著
明らかな「見立て違い」から始まった捜査ながら、筋書きと現実との乖離に直面しても特捜部は撤退せず、事実をねじ曲げて強引に突き進んでいった。頼みの録音・録画制度も踏みにじられ、「粉飾する中小企業など何万社潰れても関係ない」と担当検事は豪語していた。この「歪んだ正義」の実態は検察首脳をも絶句させるものだった。
長引く不況下で懸命に経営に取り組む中小企業経営者たち。その多くは、生き残るため売り上げの水増しなど何らかの粉飾決算に手を染め、また、彼らを支える税理士や経営コンサルタントなどの多くもこれに協力せざるをえない状況になっている。
本書は、そうした中小企業の一社に焦点を当てて、東京地検特捜部の捜査によって無残に踏み潰されていく過程を生々しく描いている。綿密な取材によって特捜検察の恐るべき実態を暴きつつ、同時に会社を守るため苦闘した男たちの人間賛歌にもなっている。
講談社 1575円
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