三菱ケミカルの選択眼、大型買収へ虎視眈々
三菱ケミカルホールディングスが三菱レイヨンの買収を検討していることが明らかになった。現段階では両社とも「開示すべき事項はない」とするが、三菱ケミカル首脳は「選択肢の一つではある」とする。実現すれば1997年の2社合併による三井化学誕生以来の大型再編となる。
三菱レイヨンは今年5月、世界最大手のアクリル樹脂原料メーカーである英ルーサイト社を買収。「プラスチックの女王」と別称されるアクリル樹脂は、液晶テレビや自動車の前照灯カバー向けなど用途が広がっている。同原料で規模、収益ともに世界1位の目標を掲げ、今年8月にもサウジアラビア化学大手とアクリル樹脂原料の合弁工場建設を決めた。
一方の三菱ケミカルは2009年3月期の海外売上高が約2割にとどまり、海外展開の強化が大きな課題。仮に買収が実現すれば、欧州・中近東市場への足掛かりを築ける。両社はもともとアクリル繊維や炭素繊維の原料を合弁会社で生産する。川上の石油化学と、その川下の樹脂・繊維が垂直統合すれば、原料からの一貫生産も可能だ。
今回の話が持ち上がった背景には、三菱ケミカルが進める構造改革がある。5月には汎用の石化製品から撤退する方針を発表。6月にも旭化成と基礎原料エチレンの設備再編を検討し始めるなど、矢継ぎ早に改革を打ち出した。
前期、国内大手6社の業績のうち、石油化学事業の赤字幅は過去最大規模の約2000億円に膨らみ、収益性低下は明らか。率先して事業構造の再構築を図っている。