ドキュメント秘匿捜査 竹内明著
スパイ天国の汚名を世界から受けながら、日本のスパイハンターたちは黙々と職務を遂行している。極秘に追尾してスパイと情報提供者の接触現場に近づこうとする彼らのテクニックと執念は世界屈指らしい。
ロシアの諜報機関を追う警視庁公安部の苦闘の1年が描かれる。著者は民放社会部記者で長年、諜報の世界を追いかけてきただけあって深みのあるドキュメンタリーに仕上がっている。ロシアの海軍大佐に絡め取られていく自衛官の人間的弱さもうまく描かれていて、単純な勝ち負けの物語にはなっていないし、そもそもここには勝者はいない。私生活を犠牲にし、地味で報われない仕事に人生をかける裏方たちのプロ意識には敬服させられる。
インテリジェンス(諜報)の政治的評価における彼我の差には一読、寒々としてくる。問題提起も話の中身も深刻でありながら、追尾の超絶テクニックには圧倒されるし、読み物としての面白さも一級である。(純)
講談社 1785円
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