ツチヤの貧格 土屋賢二著
電車の中で読むのはお勧めしない。評者など噴き出すこと数知れず、そのたびに顰蹙を買ったのではないかと車内をそっと窺って冷や汗をかいた。著者自らを肴に夫人、大学の同僚、教え子、知人友人が入れ代わり立ち代わり登場して揶揄、嘲弄、非難、批判の雨あられ、それがなんともおかしい。かつ上品ともいえないレトリック、隠喩、ダジャレの連発。この知的作業には頭が下がる思いだ。
お茶の水女子大の哲学教授だからといって学問チックではない。哲学的には、などと悩んで読むことはない。と思いはしたが、全編に深遠な哲学的含意がまぶされていたのではないかと、時とともに自信がなくなってきた。
週刊誌連載の人気エッセイを飽きずに次々に単行本化している著者も出版社も偉い。最大の取り柄は一篇が3ページ止まりなので、つまらなくてもすぐ次の話に移れることだ。とはいえ定価の元は十分とれた。何よりだった。(純)
文藝春秋 1300円
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