カラマーゾフの妹 高野史緒著

カラマーゾフの妹 高野史緒著

書名からは不朽のロシア文学長編の単なるパロディを想像しかねないが、「原作」を深く読み込んで書かれた正統的「続編」である。ドストエフスキーは父殺し事件の「13年後を書く」と言って果たさなかったが、真犯人捜しを主題に第2、第3の殺人事件が発生し交錯して興趣は一段と盛り上がる。特別捜査官となった二男イワンと、故郷で教師をしている三男アレクセイの精神構造が大きな伏線となるとともに、原作で仕掛けられた疑問点(凶器や失われた3000ルーブルはどこへ行ったのかなど)の謎解きや殺人の動機など推理小説としても一級品だ。

当時のロシアの人々の生きざまや社会情勢、宗教、さらに精神医学や先端科学技術まで、著者の豊富な知識と解き放たれた想像力が織り成されて複合的味わいの作品が生まれた。練り上げられた文章に展開、描写、会話、推理とどこをとっても瑕疵(かし)が見当たらないのも見事。江戸川乱歩賞にふさわしい快作である。(純)

講談社 1575円

  

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