カラマーゾフの妹 高野史緒著

カラマーゾフの妹 高野史緒著

書名からは不朽のロシア文学長編の単なるパロディを想像しかねないが、「原作」を深く読み込んで書かれた正統的「続編」である。ドストエフスキーは父殺し事件の「13年後を書く」と言って果たさなかったが、真犯人捜しを主題に第2、第3の殺人事件が発生し交錯して興趣は一段と盛り上がる。特別捜査官となった二男イワンと、故郷で教師をしている三男アレクセイの精神構造が大きな伏線となるとともに、原作で仕掛けられた疑問点(凶器や失われた3000ルーブルはどこへ行ったのかなど)の謎解きや殺人の動機など推理小説としても一級品だ。

当時のロシアの人々の生きざまや社会情勢、宗教、さらに精神医学や先端科学技術まで、著者の豊富な知識と解き放たれた想像力が織り成されて複合的味わいの作品が生まれた。練り上げられた文章に展開、描写、会話、推理とどこをとっても瑕疵(かし)が見当たらないのも見事。江戸川乱歩賞にふさわしい快作である。(純)

講談社 1575円

  

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 就職四季報プラスワン
  • 森口将之の自動車デザイン考
  • ボクらは「貧困強制社会」を生きている
  • 赤木智弘のゲーム一刀両断
トレンドライブラリーAD
人気の動画
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
ストロング系チューハイの光と影
ストロング系チューハイの光と影
「電話嫌いの若者」が急に増えた意外すぎる理由
「電話嫌いの若者」が急に増えた意外すぎる理由
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
「未来を知る」ための読書案内<br>ベストブック2021

先を見通せない日々が続きますが、本を開けばアフターコロナ時代のヒントがあふれています。本特集では、有識者や経営者、書店員らが推薦した200冊を掲載。推薦数の多い順にランキングしました。あなたにとっての珠玉の1冊を探してみてください。

東洋経済education×ICT