【キーマンを直撃】リストラはやりたくないが生き残りには避けて通れない--SUMCO瀧井副社長
--まず手をつけたのは。
会社の中で業績がどうなっているか、数字がどうつながっているのかを分かるようにしました。それまでは社内のコミュニケーションがよくなかった。大事なのは今、経営陣が何を考えているのかを、理解してもらうことです。経営トップが同じことを繰り返して言うのが重要です。
--SUMCOは、大株主である住友金属と三菱マテリアルが同じ出資比率(27.8%)で並んでいることが、過去の意志決定に悪影響を及ぼしたとの見方もありますが。
そんなことはないでしょう。そもそも大株主は手取り足取り、SUMCOのビジネスに口を出してきていません。
■シェア争いで価格が半減に
--かつて高収益を誇ったSUMCOですが10年1月期~11年1月期は営業赤字、12年1月期もほぼ営業損益は収支トントンと苦戦が続いています。
オーバーキャパシティ(設備過剰)に陥ってしまったのが要因です。SUMCOは積極的な投資で、直径300mm製品を中心に半導体シリコンウエハの生産能力を拡大していきましたが、リーマンショックで需要が急減してしまった。
需要のないところに売りにいくとなると、シェアを取るしかない。他社もシェアを取られれば黙ってはおられず、取り返しに来る。その結果、激しい価格競争が起こりました。しかし、結局のところ全体の量は変わりません。価格だけが落ちました。直径300mm製品を例に出せば、価格はリーマンショック前の半分以下まで下げてしまいました。
08年1月期に4000億円を超えていたSUMCOの売上高は、2000億円台まで落ちてしまった。設備投資は一部ストップしましたが、膨らんだ減価償却費を賄えなくなった。巨額の純損失を3年繰り返してしまったことで、利益の出ない会社とみなされ、最後の最後は繰延税金資産を取り崩すことにもなりました。
--シェア競争は止められなかった?
現場としては稼働率を高めたいという思いが強かったワケです。本当は設備があっても生産調整するのは可能だと思います。鉄鋼業などでは、しょっちゅうやっています。でも、現場は売り上げが上がると儲かると思う。「コストを安くしたい」「作らせてほしい」と言う。しかし、需要は増えませんから結局、価格が下がる。悪循環。単純なことです。