3カ月→9カ月→27日⁉ フランスは日本もビックリの3代続いて「短命政権」、イギリスとドイツも右傾化… 欧州政治"混迷"のナゼ

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東西ドイツ統合以降の「東西格差」がいまだに解消していないドイツでは、急増した移民に対する反発が旧東ドイツ国民の中で強く、結果的に旧東ドイツ地域を中心に極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進。25年2月の連邦議会選挙で勢力を伸ばした。

同年8月には一部の世論調査でAfDが政党支持率で首位となり、別の世論調査でも同党の支持率は連立与党内の政党を上回った。

アリス・ワイデル
AfDのアリス・ワイデル共同党首(写真:ブルームバーグ)

これまで主要政党は「AfDとは政策的に協力しない・接点を持たない」という“暗黙の壁”を保ってきた。例えばアンゲラ・メルケル首相時代には、AfDとの協働を強く回避する姿勢が取られていた。

ところが、現在のフリードリヒ・メルツ政権の動きの中には、時にAfDの支持票を頼りにするような採決を進める動きが見られ、与野党から強い批判を受けている。

ドイツ国内では昨年来、AfDに対抗・監視する市民運動や反対デモが活発化しており、各地で「AfDは許さない」「民主主義を守ろう」という抗議運動が起きている。それでもAfDの躍進を止められない状況が続いている。AfDは確実に“第3の政治勢力”としてドイツの既存政党に脅威を与えている。

日欧の相違点から何が見えるか

フランスをはじめとした欧州は今、既存政党の弱体化とポピュリズム運動の台頭による政治的危機に瀕している。国民の「中道政党離れ」は深刻で、極右勢力と急進的社会主義勢力がそれぞれ、伝統的保守と社会平等を追求する右派・左派の有権者の受け皿となっている。

欧州では、市民レベルの抗議運動が政府に圧力を加える傾向が強い。政治が時代に合わないのなら、どんな大政党でも解党・合併し、名前も政策も時代に合うように設定し直して危機を乗り切るのが欧州流だ。ただ、それでいい結果が出るとは限らないことも、歴史が証明している。

一方、日本は自民党が「解党的出直し」と叫びながらも、高市新執行部の言動を見る限り、これまでと変わらない閉塞感が漂っている。日本の政治は、左右両陣営とも業界団体に軸足を置いているので、いくら「政治とカネの問題を解消する」と言っても、業界団体を無視した構図は成り立たない。危機を訴えながらも変化に慎重で、新たな選択肢を示すより、力を持つ党幹部同士で落とし所を探す傾向がある。

欧州から何を学び、どう変えるのか――。日本政治は歴史的な岐路に立っている。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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