日本の子ども、勉強ができても自信がない…《自律的に学ぶ能力を育てる「自己調整学習」が必要な理由》 "深い学び"を促す先生の問いかけとは?

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一見、少し複雑に感じられるかもしれません。しかし、ここで押さえるべき最も重要な点は、自己調整学習がまずもって1つの「理論」であるということです。自由進度学習や複線型授業といったものは、その理論を具現化するための学習「形態」や「手法」の1つに過ぎません。

学びの「本質」である自己調整学習と、それを実現するための「形式」である学習形態は、次元の異なる概念なのです。特定の形式を導入すれば自己調整学習が育つ、という安易な結論に飛びつくべきではありません。重要なのは形式ではなく、その中でいかに自己調整のサイクルを促すかであり、それは従来の一斉授業という形態であっても十分に可能なのです。

浅い学びか深い学びか、教員の「問いかけ」1つで変わる

さらに、これらの理論的背景を踏まえたうえで、実践において最も問われるべきは、「それが真に“深い学び”につながっているか」という点です。

もし自己調整のサイクルが、単にタスクをこなすための作業手順として機能してしまえば、学びは表層的なものにとどまります。例えば、次のようなケースです。

予見:「今日の課題プリントを15分で終わらせる」といった量的な目標になる。
遂行:「とにかく早く終わらせよう」と、解き方を暗記して機械的に作業する。
自己省察:「時間内に終わった」「難しかった」といった単なる感想で終わる。

これでは、算数でいえば「なぜこの公式が成り立つのか」「この考え方は、ほかのどんな問題に応用できるか」といった概念的な理解や、粘り強く多様な解法を考える思考力にはつながりません。

深い学びは、学習者が知識の関連性や意味を自ら見いだし、構造化していくプロセスで生まれます。自己調整学習をそのためのエンジンにするには、教師の働きかけがカギとなります。

例えば、目標設定(見通し)や振り返り(省察)の質は、教師の「問い」1つで大きく変わります。

予見での問いかけ
(浅い)「今日の目標は何?」
(深い)「今日の学びを通して、何ができるようになりたい?」「この問題の“一番大切なポイント”は何だと思う?」「これまでに習ったことで、使えそうなものはないかな?」
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