日本の子ども、勉強ができても自信がない…《自律的に学ぶ能力を育てる「自己調整学習」が必要な理由》 "深い学び"を促す先生の問いかけとは?
この高い学力と主体性の低さというギャップは、日本の教育の持続可能性に対する警鐘であり、授業内外で自律的に学ぶ能力をどう育てるかが重要な課題となっています。
この結果も後押しとなり、より自律した学習者の育成、すなわち自己調整学習能力の大切さがうたわれ、日本全国でその実践が拡大しています。高い学力を持ちながらも、自らの学びの舵取りに自信が持てない子どもたち。このギャップを埋め、彼ら彼女らが未来の荒波を乗り越えるための「羅針盤」を手渡すことこそ、今の教育に求められる喫緊の課題でしょう。
誤解される自己調整学習、実は一斉授業でもできる
しかし、その一方で、「子どもに任せる」「計画を立てさせる」といった手法論や、「自由進度学習のような特定の学習形態を導入しなければならない」といった形式論に陥るような誤解が生まれていることも事実です。その誤解は、自己調整学習の本質を見落としていることから生じています。
アメリカの教育心理学者、バリー・ジマーマンは自己調整学習を、「学習者が、動機づけ、学習方略、メタ認知において、積極的に学習過程に関与する学習」と定義しています(Zimmerman,1989)。
つまり、自己調整学習とは、学習者が自らの学習過程に主体的に関与し、メタ認知(自らの思考や学習状況を客観的に把握する力)や動機づけを駆使しながら、目標達成に向けて学習をコントロールしていくことです。これは単なる「自主学習」や「自習」とは一線を画します。
ジマーマンは、自己調整学習のプロセスを「予見段階」「遂行段階」「自己省察段階」という3つの段階に分けました。この3つの段階を学習者自身がサイクルとして回していくことこそが、自己調整学習の核心です。それは、学習者が「受け身の客体」から「学びの主人公」へと変容していくプロセスそのものなのです。
そして重要なのは、「予見段階だから動機づけ」「遂行段階だから学習方略」といった単純な対応関係ではなく、それぞれの段階において、動機づけ、学習方略、メタ認知という3つの要素が相互に関わり合いながら機能する点にあります。だからこそ、単に自己選択や決定を学習者に委ねるだけでは不十分であり、教師による適切な指導と足場かけ(スキャフォールディング:学びのサポート)が不可欠なのです。


















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