何が"去り際の宰相"を突き動かすのか? 石破首相が《復活》に執念を燃やす「ある国会議事録」の正体
そうした中で浮上してきたのが、斎藤反軍演説の削除問題だった。石破氏には「政治が戦争への流れを止められなかった象徴的な出来事」と映っている。その削除部分を復活させることで、軍国主義に突き進んだ歴史への反省を示すことにもつながると考えている。
石破氏は、政権が1年で幕を閉じることになったことについて、「石破らしさが発揮できなかった」と悔やんでいる。「政治とカネ」の問題で、関係した議員らの復権を許さず、資金の透明化を進めることなどが「石破らしさ」と考えてきたが、目立った成果は出せなかった。
「戦争の検証と反省へのこだわり」も「石破らしさ」だが、こちらも十分に意志を貫けなかった。斎藤演説の議事録復活は、どうしても退任までに実現したい「石破らしさ」の1つなのだろう。
石破首相は執念を貫けるか
実際の反軍演説は、演説当日に注目を集め、翌日の新聞の中には「演説全文」を掲載したところもあった。海外でも大きく取り上げられている。
議事録が削除されても、全文は多くの人々に読み継がれてきた。現在は、国立国会図書館の帝国議会会議録検索システムで削除後の「官報」を見ることができる。削除前の全文は、東北大学など、さまざまな研究機関のホームページなどに掲載されている。
衆院事務局によると、国会の歴史の中で不適切発言などによって議事録が削除されたケースは多いが、削除部分を復活させた例はないという。復活のためのルールも定まっていない。すべての会派が同意し、議事録の復活のための衆院規則が設けられれば、復活は可能だという。
石破首相の指示を受けた自民党の森山裕幹事長らが野党にも呼びかけ、与野党が議院運営委員会で削除部分の復活に向けた具体的な段取りを話し合うことになりそうだ。反軍演説の議事録復活で石破氏の執念が貫けるかどうか。石破政権最後の勝負どころである。
(一部敬称略)
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