「○○だったら交際は終わっていた」…僕の彼女は教員、"普通じゃない"と感じる理由 会社勤めのパートナーが見た異世界の日常

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もう1つは、産休・育休中の妻の給与待遇だ。

「全く勤務していないのに働いている形になっていて、自動的に昇格・昇給してボーナスまでしっかりもらっていたことです。公務員と民間企業の違いなんでしょうけど、こんなこと普通の会社じゃありえない。子どもがいるので家計的にはありがたいのですが……」(山中さん)

だが、山中さん自身は「教員をやりたいとは思わない」という。

「うらやましいと思ったのは、それだけです。生徒だけでなく、保護者にも気を遣わなきゃいけないし、大変さと給料が全く見合っていません。妻は今後も教員を続けていくようですが、私には務まりそうにありません」(山中さん)

取材から見えてきたのは、異業種と比較して明らかな長時間労働、よくも悪くも特殊な勤務形態、そして肉体的、精神的に追い込まれる教員に「もう少し自分の体のことを考えてほしい」(小出さん)、「ポジティブな話がなく、メンタルが心配」(山中さん)と心を痛めるパートナーの姿だった。

そして気になったのは、「もし土日すら会えない状況だったら、交際はうまくいかずに終わっていたと思います」(小出さん)という言葉だ。確かに、平日は早朝から夜遅くまで働き詰めで、土日も休めない相手と関係性を深めるのは困難だ。教員の長時間労働は心身への影響だけでなく、他者との出会いや生き方まで狭めていないだろうか。

文科省が2022年に実施した「教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(確定値)」では、すべての職種で平日・土日共に在校等時間が減少した。また今年、給特法の改正案が可決され、同時に働き方改革の計画づくりや報告、進捗などを確認することが教育委員会と学校に義務づけられた。

それだけで改革が進み、先生たちの働く環境が改善するのかという懸念はある。しかし、民間企業ではリモートワークやフレックスタイム制、副業など多様な働き方が認められるようになり、ワークライフバランスを重視する人が増えている。

保護者や地域との関係から「教員にプライベートはない」などといわれるが、もうこれ以上、学校現場から離脱する先生を増やさないためにも、働き方改革は待ったなしの状況だ。

(注記のない写真:buritora / PIXTA)

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
中野 龍 フリーランスライター・ジャーナリスト

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なかの りょう / Ryo Nakano

1980年生まれ。毎日新聞学生記者、化学工業日報記者などを経てフリーランス。新聞や週刊誌で著名人インタビューを担当するほか、社会、ビジネスなど多分野の記事を執筆。公立中学校・高校で社会科教諭(臨時的任用教員)として勤務した経験を持つ。

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