大学生のレポートで散見される「剽窃」や「思考の放棄」、AI時代に必要な「書く力」の育て方 「文章には正解がある」と誤解する学生は多い

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AIの進化は日々加速しており、学習指導要領改訂に向けた議論の中でも、生成AIの活用を含め情報活用能力の育成を強化する方針が示されている。教育現場では感想文や論文など「書く」場面が多いが、AIが文章作成を担える時代を迎えた今、書く力をどう捉えて育てていくべきか。2004年に「早稲田大学ライティング・センター」を立ち上げ、文章指導に長年取り組んできた早稲田大学名誉教授の佐渡島紗織氏に、AI時代に求められる「書く力」の育て方について考えてもらった。

大学で求められる「書く力」とは?

大学での職を退いた今、一番懐かしく感じるのは、学生と一緒に研究をするときのわくわく感である。とりわけ、卒業論文、修士論文、博士論文という学位論文に取り組む学生たちとのやり取りは、ほかの場面では味わえない魅惑的な時間であった。

なんといっても、それは、学問が創造的な営みだからである。学術論文は、誰も発表していない“新しい発見”を示し、公表したものをいう。誰かがどこかで書いている事柄を改めて書き表したものは論文とはいえない。

学部のゼミでは、学生たちがよく「世の中にこんなにたくさんの本や論文があるのに、20年と少ししか生きていない自分に新しいことなど言えません」と言っていた。しかし、卒業論文であっても、すでに誰かが同じ問いで答えを出していないかを確認してから取り掛かるように指導してきた。問いが同じであっても、研究対象や分析方法が異なれば、それは新しい発見になる。

誰かが問いを立てて追究し、その答えを発表する。さらに別の誰かが、その問いに何かを付け加えたり新しい問いを立てたりして追究し結果を発表する――この繰り返しにより、人類の知識が蓄積されてきた。学問とは、それまでの発見を踏まえて、人類全体の知識を前に進めていくものである。

大学は、学問をするところだ。いわば、新しい知識を人類にもたらすための訓練をする場である。1年生から3年生までの間にたくさんのレポートを書き、4年生で集大成としての卒業論文を書く。レポートにおいては、主張の新規性を証明するところまでを求められることはまれであるが、大学での文章作成には新しいアイディア、すなわち独創的な着想が求められる。

AIに頼って「正しい答え」を書こうとする学生たち

2022年に生成AI(以下、AI)の「ChatGPT」が出現してからは、社会全体における文章作成が様変わりした。企業では、いかにAIを使って仕事を効率よく進めるかが課題であろう。今年3月に卒業したゼミ生が「新入社員の研修ですごく時間をかけてAIの使い方が指導された。大学とあまりに違っていて驚いた」と言っていた。

佐渡島紗織(さどしま・さおり)
早稲田大学名誉教授
専門は国語教育、特に文章作成の指導と評価。1998年イリノイ大学アバナシャンペーン校Ph.D.。1998-2002年国立国語研究所非常勤講師。2002-2025年早稲田大学、アジア太平洋研究科、国際教養学部、留学センターを経て国際学術院教授。著書に『これから研究を書くひとのためのガイドブック第2版』(共著、ひつじ書房)、『法を学ぶ人のための文章作法第2版』(共著、有斐閣)など
(写真:本人提供)

大学においても、「AIで文章を書いてはいけない」という時代はもう終わったと感じる。アメリカの某有名大学で、レポートの評価でA+やAを取る学生とBを取る学生を比較したところ、次のような違いがあったと聞く。

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