中高生の「なりたい職業」不動の1位、《教員は10年連続》人気が衰えぬ意外な背景 夢を持つことを強要する「ドリハラ」には要注意

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学校段階による人気職業の順位の変化に注目すると、「教員」「医師」「保育士・幼稚園教員」などは小中高を通して人気が高い。また、学年が上がると、「看護師」「医療専門職」「薬剤師」などの資格が必要な職業の希望が増えていく傾向にある。

松本留奈 まつもと・るな
ベネッセ教育総合研究所 主任研究員
京都大学大学院教育学研究科修士課程修了(教育学修士)。乳幼児から高等教育まで幅広い教育段階において、子ども、保護者、教員を対象とした意識や実態の調査研究に多数携わる。自律的学習者が育まれるプロセスと適切な支援のあり方に関心を持っている
(写真:ベネッセ教育総合研究所提供)

「『店員(花屋・パン屋など)』『YouTuber・VTuber』『パティシエ』『イラストレーター』などの趣味や遊びの延長線上に位置づけられる職業や、『プロスポーツ選手』『芸能人(俳優・歌手・芸人など)』といった一握りの人しかなれない職業は、学年が上がると順位が低下します。学年が上がると、職業に対する意識がより現実的になっていくと言えるでしょう」

男女による違いとしては、小学4~6年生では男子は「プロスポーツ選手」の人気が突出しており、女子では「店員」や「パティシエ」などのほか、「看護師」や「保育士・幼稚園教員」といったケアを担う職業への興味が高くなっている。中高生になっても男女差は見られ、男子は「ゲームクリエイター」や「SE・プログラマー」など、女子は「薬剤師」に加えて「管理栄養士」などが上位にランクインしている。

「子どもたちがなりたい職業を考える際の基準の一つが『性別』であること、発達段階に応じて『現実的な選択』になっていくことは、先行研究※2でも指摘されています。最終的には社会に出て自分の居場所を作っていかなければならないことを考えると、やりたい仕事を見つけるという積極的な姿勢だけではなく、興味のないものや苦手なものを排除する方向にも思考が働くようになります。同性のロールモデルの影響を受ける部分もあり、今回の調査結果で見られる男女の違いは先行研究の内容とも一致するものです」

※1 野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」
※2 Circumscription and Compromisie: A develpomental theory of occupational aspiration  抑制と妥協:職業願望の発達理論(Linda Gottfredson,1981)

教員志望の子どもの気持ちは学年が上がっても変わりにくい

2024年の調査では、「教員」は小学4~6年生では3位、中学生では「プロスポーツ選手」と同率で1位、高校生では1位にランクインした。この10年間にわたる調査においても、「教員」は中高生では一貫して1位を維持している。人気の背景について、松本氏は次のような見解を述べる。

「『尊敬できる先生がいるか』について尋ねた設問には、小学4~6年生では約7割、中高生では約6割が『いる』と回答しており、10年間ずっと高い水準を保っています。また、2014年に実施した別の調査※3でも、『学校の先生の仕事は、大変な仕事だが、子どもや世の中のためになる仕事』という意識を持っている子どもが多いことがわかっています。子どもたちの目には、教員はやりがいのある職業にうつっているのだろうと思います」

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