舞の海氏が野村証券と南青山FASを相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、南青山FASが提出した裁判資料などによると、仙石氏は2020年7月10日、東京・渋谷のオフィスビルにあるボーノの本社で、取引先の不動産会社のS代表(36)から紹介された首藤被告と初めて面談。南青山FAS社員で、2022年3月に東京・日本橋の同証券本店営業一部(現・本店営業部)で同被告を舞の海氏に紹介することになるF公認会計士が陪席した。
首藤被告はまず仙石氏に対し、①南青山FASの潜在顧客紹介先の一つであるG社と共同で電力削減事業を行っていた、②東証プライム市場に上場している「プレミアムウォーターホールディングス」傘下の「プレミアムウォーター」の出身、③ビッグデータを活用した電力削減のノウハウがある――などと自己紹介。その上で「われわれがやっている電気料金削減サービスの顧客や、このサービスの販売取次店になってくれる顧客を紹介いただけないでしょうか」などと打診した。
「節税効果が得られる」と判断
続けて首藤被告は、ボーノが営んでいるという電気料金削減サービスを使った節税スキームについて仙石氏に説明した。
「顧客を獲得する費用を販売取次店が支払い、その部分を費用計上する一方で、実際に電力が削減された顧客からはその後、削減分についての報酬が入ってくるため、販売取次店はそれをもらうということでした。販売取次店が(営業代行会社に)支払う費用を一括損金計上できるという節税の手法で、以前プレミアムウォーターで水を販売した時にも同じやり方をしていたと聞きました。販売取次店が顧客獲得業務を委託する先はボーノグループの会社ということでしたが、それがネクスト社であることは後から知りました」(前述の公判での仙石氏の証言)
また、電気料金削減サービスの販売取次店や顧客をボーノに紹介することで南青山FASが受け取る紹介料は、スキーム利用者が提供した金額の9%相当額ということだった。
「首藤氏の説明を前提とすると、一般論としてはスキームに資金提供した顧客は節税効果が得られる。顧客のメリットになる商材だ」と判断した仙石氏は、「では紹介します」と回答。南青山FASの顧客に紹介する企業の一つにボーノを加え、その約半月後の7月下旬には提携先の野村証券にも首藤被告を紹介した。
ところで仙石氏が首藤被告から“節税”スキームの販売提携を持ち掛けられた2020年7月当時、ボーノを契約主体とするこのスキームはとっくに実体を失っていた(本連載第5回参照)。それだけでなく、スキーム利用者に継続手数料の名目で返還する資金の「元本保証」「確定利回り」をうたった覚書もすでに存在していた。
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