教員の「副業」、許可の判断基準は?現役高校教員の挑戦で見えてきた曖昧なOK /NGライン 訴訟経験と多様な申請から探るルールのあり方
とはいえ、ただでさえ多忙な教員が副業や兼業するとなると、「本業が疎かになるのでは」と考える人もいるだろう。
「懸念する方がいるのも理解できます。しかし私は、副業や育児に時間をかけるほど、それぞれが関係しあって『本業』と『それ以外』の境界線がいい意味で曖昧になると感じています。本業に対して、『労働時間の対価として賃金を得る』というより、『この時間でさらに付加価値を高めたい、よりよいものを作りたい』という感覚になっていくのです。“労働というより仕事”という感覚でしょうか。たしかに、副業中や育児中に授業プリントを作ることはできません。しかし、副業の漫画の内容を考えながら授業の切り口を思いつくことはありますし、漫画のコマ割りを考える中で、授業の『構成力』が上がったという実感もあります」

価値観が多様化する今、副業・兼業に追い風が吹いている
パパ頭氏のもとには、同僚からはもちろん、SNSを通じて各地の教員から副業に関する相談が寄せられている。
「相談内容としては、『こうした働き方は、法律上認められると思いますか』というものが多いですね。『法律の専門家ではないので細部は答えられませんが』と前置きした上で返答しています。また、前例が多いケースは答えられますが、地域ごとに条例も違いますし、法律の解釈も異なります。そのため、お住まいの地域の規則を確認するように勧めることも多いです」
パパ頭氏のSNSアカウントやブログなどには、自身の訴訟経験だけでなく、副業申請の認可・不認可の事例も随時アップされている。後に続く人たちのために、データベースとして使ってほしいという思いがあるそうだ。最後にパパ頭氏に、やりたいことがある教員に向けてメッセージをもらった。
「無責任なことは言えませんが、社会が変化している現在、さまざまな経験が社会や仕事に影響を与えます。もちろん無理にやる必要はありませんが、やってみたいことがあるならぜひ、校長や経営企画室に申請してトライしてみてください。今は副業や兼業に追い風が吹いていますよ」
働き方や生き方、価値観が多様化する時代。大人一人ひとりが、この情報化社会という大海をどう泳いでいくか、選んでいく必要がある。副業や兼業を通して新たな視点や武器を手に入れ、児童や生徒に還元していく。そんな教員が少しずつ増えることでも、学校現場は変わっていくのではないだろうか。
(文:吉田渓、注記のない画像:パパ頭氏提供)
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら