「特異な才能のある子」に「特別の教育課程」、"ギフテッド教育"戸惑う教員に必要な視点 教員の支援で学校に足が向くようになった子も
小学6年生の理科の授業で「体のつくりとはたらき」を学ぶ際に、動物園の職員を教室に招いて、動物の体のつくりについての特別授業を実施。人の体のつくりとの共通点や相違点を考える
・JST次世代科学技術チャレンジプログラムを受講して、大学などの先端的研究施設を使用したり、大学教員などから指導を受けたりする
・国際ユースサミットなどに参加し、世界の多様な人々の中で探究活動に挑戦する
「担当教員(自分)」が「教室内」で対応できることは多数あり、実際にすでに工夫されている先生も多いでしょう。一方で、「やり方がわからない」「負担が大きすぎて手が回らない」と考えて負担に思う先生もいるかもしれません。児童生徒が興味関心のある分野を専門家につなぐことも重要な役割だと考え、ほかの先生方や外部の専門家との連携を進めることが大切です。
――教員が外部の専門家とのつながりを作るには、どうすればよいでしょうか。
小学校であれば、遠足や社会科見学などで訪れている施設に協力を依頼するのもよいでしょう。中学・高校で、より高度な内容の支援が必要とされる場合は、校内でそれぞれの分野を専門とする先生に相談したり、図書館で専門書や学術書を調べたりすると、情報が入手しやすくなります。
それに加えて、JSTの電子ジャーナルプラットフォーム「J-STAGE」では、生徒の関心領域のキーワードをもとに関連する研究者の論文などを探すことができます。また、全国の研究者が業績を管理・発信するデータベース「researchmap」や大学のウェブサイトでも、研究者や教員の研究分野や業績等が公開されています。
特異な才能のある児童生徒の支援に資するプログラムを実施している外部機関やコンテストの情報は、文科省のウェブサイトでも一覧が公開されています。
――支援を毎回の授業で行うことが難しい場合、月に1度や学期に1度の実施でも効果はあるのでしょうか。
先生方も、つねに完璧を目指す必要はありません。月に1度、学期に1度でも、才能のある子どもたちがその特性を発揮し、強みを生かせる場を提供できれば、それは貴重な成長の機会となります。例えばさまざまな教科の学習や授業外の場面において、それぞれが学期に1度、そのような機会を設ければ、学校全体としては子どもたちに複数の機会を提供できます。
キッズアカデミアのメンバーの事例では、小1で高校の理科の内容を理解できるものの、学校で居場所を見つけられずに不登校傾向だった児童が、小2で担任が変わり、授業中に時折スペシャル問題を用意してもらえるようになったことがきっかけで学校に足が向かうようになったケースがあります。頻度が低くても、自分の特性を発揮できる機会があることは子どもによい影響をもたらすと言えるでしょう。
「才能教育センター」では教員向けの研修を実施予定
――通常学級の中で、特異な才能のある児童生徒から高度な内容の発言があった際は、どのように対応すればよいのでしょうか。

愛媛大学学長特別補佐・教育学部附属才能教育センター長・教育学部教授
博士(教育学)。専門は、才能教育・STEAM教育。才能のある幼年児を対象とする「キッズアカデミア」を2010年にスタート。2013年に野依科学奨励賞受賞。ケンブリッジ大学のキース‧テイバー教授と共に世界の科学才能教育研究成果を編纂し、Routledge社より3冊シリーズを刊行。2018年日本科学教育学会学術賞を受賞。2022年The 17 Asia-Pacific Conference on GiftednessにてBest Oral Presentation Award受賞。アジア太平洋才能教育連盟(Asia Pacific Federation on Giftedness)理事、世界才能教育協議会(World Council for Gifted and Talented Children)日本代表
(写真:本人提供)