完全独学で東大に合格、"最悪な日"でも勉強できる「自分のやる気を信じない」仕組みづくり 「帰ってOK」「CM勉強法」合格体験記20年分に学ぶ
人間は、“やらないこと”であれば実行しやすい
そのほかにも、歩きながら単語を覚える時間を確保するために、地下鉄を「ひと駅乗り過ごして降りる」というルールを設けた。「ひと駅手前で降りる」のは面倒だったが、「乗り過ごす=自分の駅で降りない」に変えたことで、実行しやすくなったという。
また「ヨミサマ。」の生徒の中には、「家に帰ったら、勉強するまで座らない」というルールを作っていた人もいるという。勉強を始めることで「立ちっぱなしから座れる」というメリットがあるため、自然と着手しやすくなったそうだ。
「人間は、何かを“やる”という能動的な行動は面倒に思えても、何かを“やらない”という受動的な行動であれば、実行しやすいものです。自分にとってハードルの低い行為や、それに紐づく行為を引き金にするのは、勉強を始めるために効果的な方法の1つだと思います」
一旦始めた勉強を継続する工夫として、まず神田氏は「スマホを遠ざけること」を意識していたという。
「スマホを近くに置いて集中するのは無理です。スマホは情報量が多く、脳も目も疲れるため、休憩中の利用はかえって逆効果です。『疲れたからスマホを見よう』と感じる時点で、冷静な判断ができなくなっているのかもしれません。私は、図書館のロッカーにスマホを完全にしまい込んで勉強するようにしていました」
さらに特徴的なのが、「休憩なしに勉強を続けること」だ。
「トイレや軽い散歩に出ることはありましたが、それ以外の休憩は取りませんでした。というのも、勉強中に疲れを感じるのは『脳が飽きているだけ』かもと考えたからです。それなら、休憩の代わりに、気分転換になる勉強法を取り入れてみようと思いました」
そこで神田氏が実践したのが「CM勉強法」だ。例えば、国語の勉強を長時間したら少し英単語を見る、数学の問題をじっくり考えたら歴史の一問一答を見るなど、長い勉強の間に5分程度、異なる科目を挟む。科目を変えることで脳が飽きを感じにくくなり、休憩せずとも疲れずに取り組めたという。
合格体験記20年分を熟読して、「学び方を学ぶ」
こうした勉強法は、「勉強法関連の書籍やビジネス書、合格体験記などからヒントを得て、自分なりにアレンジを加えていった」と神田氏。特に影響を受けたのは、東京大学新聞社から刊行されている『現役東大生がつくる東大受験本』のシリーズで、メルカリなども駆使して過去20年分を集め、300〜400人分の合格体験記および不合格体験記を熟読したそうだ。
「まずは『学び方を学ぶ』ことから始めました。勉強法を1つずつ試して、自分に合わなければ別の方法を試すことを繰り返したのです。例えば合格体験記では、多くの人が『音読』を挙げていましたが、私の場合、文字を音声化する作業に気を取られて内容を理解する余裕がなくなってしまいました。人間は成長する存在なので、つねに今の自分に合った新しい勉強法を模索していくことも重要だと思います」
続けて神田氏は、「数多くの合格体験記を読んだことは、参考書や問題集を選ぶにあたっても役立った」と話す。ドイツから日本に一時帰国すると大型書店に足を運び、実際に参考書や問題集を手に取って中身を確認し、自分に合うか判断していたという。
「当初は、『参考書は内容を理解するもの』『問題集は理解度を確認するもの』という違いを理解できておらず、例えば数学では、高難易度の問題集である『青チャート』から始めて挫折したこともあります。でもそこで、『独学で理解するには詳しい解説が必要だ』と感じ、すぐに参考書に切り替えました。
一方で、先に問題集を見ておくことで、学習の観点を把握してから勉強を進める考え方もありますが、その場合も1周目は簡単な練習問題を解くだけに留めるなど、時間をかけすぎない工夫は必要です。問題集:参考書=2:8くらいが良いのではないでしょうか」