「教員や子どもが盗撮」「卒アルから性的動画」・・・深刻被害の背景に犯罪へと駆り立てるSNSの闇 子どもを被害者・加害者にしないためには?
ただ、すべての家庭でこうした対応ができるとは限らないため、学校でも人権やネットリテラシーに関する教育が重要です。愛知県日進市では盗撮や自撮り被害から子どもを守るため、わいせつ画像をAIで検知するアプリ「コドマモ」を今年9月から全小中学生と教員のタブレット端末に入れることになったそうです。このような加害を作らない環境づくりも大切だと思います。
私たちが学校に「学校内で盗撮されたと思われます」とお伝えすると、「まさか!」という反応が返ってきますが、1人1台端末が整備され、多くのお子さんがスマホを持っている今、いつ盗撮が起こってもおかしくないと捉えていただきたいです。
学校の対応によっては「被害者の権利」が阻害されてしまう
――問題が起こった時、学校はどうすればよいでしょうか。
まずは警察に相談してください。そうすることで、被害者はきちんと被害を訴えることができます。
ある事例では、被害者と加害者が同級生でした。教員が加害者生徒のデバイスから問題の画像を削除させましたが、すでにSNSで拡散されていたことが後から発覚。しかし、加害生徒のデバイスから証拠となる画像を削除してしまっていたため、盗撮扱いにならなかったそうです。このように、対応を間違えると被害者の権利を阻害してしまう可能性があります。
だからこそ、迅速に適切な対応ができるよう、事前に対応策を整備しておくべきでしょう。また、被害者が女子生徒の場合は女性の先生が対応するなど、同性の先生が対応する体制も基本としていただきたいです。
とはいえ、学校のセキュリティではプラットフォームにアクセスできないなど、被害を確認できない場合もあります。現場が可能な対応には限界がありますから、公立学校なら教育委員会に対応窓口があるとよいのではないかと思います。
もう1つ、考えなければならないのが「被害者と加害者を同じ教室で学ばせ続けるのか」という問題。加害者にも学ぶ権利があるため学校からは強く言えないようですが、被害者に負担をかけないことが前提であるべきです。ここも、教育委員会や文科省などの上位機関が指針を示す必要があると思います。
――2026年に運用開始予定の「日本版DBS」は抑止力になるでしょうか。
現状は不十分な点があります。日本版DBSの対象となっているのは、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪、撮影罪などで、子どもの私物に体液をかける行為やディープフェイクの作成などは含まれていません。対象となる性暴力に漏れがないような制度設計を求めます。
また、教員グループで盗撮画像を投稿した教員が逮捕されましたが、画像投稿をしていない参加者も子どもの近くにいてはいけないのではないでしょうか。そうした人も弾く形にしていただきたいと考えています。
(文:吉田渓、注記のない写真:Graphs/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら