「教員や子どもが盗撮」「卒アルから性的動画」・・・深刻被害の背景に犯罪へと駆り立てるSNSの闇 子どもを被害者・加害者にしないためには?
教員だけではない、「子どもによる盗撮」も
――児童生徒が同級生を盗撮してしまうケースもあるのでしょうか。
はい。今の若年層は、昼寝している友だちを勝手に撮影してネットにアップしてしまうなど、撮影行為に対するハードルが著しく低いと感じます。盗撮もそうした感覚で行われているように思います。
また、学校で盗撮可能な人は限られますので、ネット上のコミュニティー内では、教員だけでなく中高生も羨ましがられ、「現役生が羨ましい」「いっぱい撮っておけよ」といった声がかかります。子どもたちが盗撮を始めたり、お小遣い稼ぎを目的に販売を始めたりと、加害側に回ってしまうきっかけがコミュニティーの中には渦巻いているのです。
そもそも今のネット環境に大きな問題があるでしょう。昔は若年層が性的コンテンツに触れる手段は雑誌やビデオでしたが、今の入り口はスマホやタブレット端末。いわゆる公式のアダルトサイトは18歳未満では見られないため、子どもたちはSNSでキーワード検索をします。すると、おすすめの性的コンテンツがプッシュされますが、その中にはデジタル性暴力画像も含まれているのです。
個人的には、思春期に性的コンテンツに興味を持つのは自然なことだと思います。しかし、成人女性が同意の下で出演したポルノ作品と、被害者がいるデジタル性暴力画像の区別がつかないうちから、性的コンテンツを浴びてしまう今のネット環境には危うさを感じています。
盗撮をする子は「バレたらいけない、怒られる」とわかってはいるようです。しかし、法律に違反したらどうなるか、相手がどんな気持ちになるか。そうした意識が足りていないのではないかと感じます。
デジタル性暴力、被害が発覚したら?
――ディープフェイク被害では卒業アルバムの悪用もあるとのことですが、どうしたらよいのでしょうか。
画像が放置されると被害が拡大する可能性があります。被害者が卒業していても、情報を伝えてほしいと思います。
被害者の対応としては、刑事事件として問うなら警察に、民事的な補償を求めるなら弁護士に相談することになります。また、被害画像・動画が手元にあれば、アメリカの民間非営利団体がSNS事業者と運営する「Take it down(TID)」の日本語版に削除依頼をする方法もあります。削除できるのはTIDに参加するプラットフォーマーの領域のみですが、無料です。
そのほか、NPO法人ぱっぷすはAI技術を使ってデジタル性暴力画像の削除要請を無料でサポートしていますし、ライツテックもアプリ「beME」を通じて同様のサービスを提供しています。こうしたシステムは、卒アルの悪用に限らず、デジタル性暴力画像の被害全般において有効です。
――子どもを被害者にも加害者にもさせないために、家庭や学校で何ができるでしょうか。
人権教育がすべてのベースになると思います。例えば、盗撮は撮影罪に問われますが、同級生の画像を基にディープフェイクを作っても、投稿しなければ法律違反にはなりません。しかし、だからと言ってやっていいのでしょうか。小さな頃から「他者の人権や性的尊厳を尊重すること」を伝えていくことが大切です。それも、発達に応じて言葉や表現を変えて、繰り返し伝えていただきたいですね。
また、お子さんにスマホを持たせる時にルールを作るご家庭も多いと思いますが、子どもは成長しますし、デジタル技術も急速に進んでいます。だからこそ、定期的なルールの見直しや再教育を意識していただきたいです。