「教員や子どもが盗撮」「卒アルから性的動画」・・・深刻被害の背景に犯罪へと駆り立てるSNSの闇 子どもを被害者・加害者にしないためには?
――デジタル性暴力画像は、どのような目的の下で拡散されるのでしょうか。
大きく分けて2つあります。1つはお金儲けの手段として行われるもので、性的な画像や動画を専門に売買するWEBサイトなどで販売されています。XなどのSNSでも売買を呼びかけるアカウントがあります。
もう1つは、性的な趣味嗜好や好奇心を満たすためのもの。例えば、児童生徒の盗撮画像をSNSのグループで共有していたとして名古屋市の教員が逮捕されましたが、報道では金銭的なやり取りがあったという情報はなく、ここは趣味嗜好による盗撮画像の交換がベースになっているコミュニティーだと思われます。
――どのような状況で被害に遭うケースが多いですか。
私たちが見た範囲では被害者の99%が女性ですが、男性もゼロではありません。私の肌感覚では、女子高生の被害が1番多いように思います。駅のエスカレーター、商業施設で参考書などを読んでいる時やお化粧品を探している時、ゲームセンターでプリクラへの落書きやクレーンゲームに夢中になっている時などに狙われることが多いですね。
被害時の服装としてはミニスカートが多いものの、ロングスカートやキュロットの隙間から盗撮したり、パンツスタイルなら下着のラインを執拗に撮影したりといったケースも。どんな服装でも狙われる可能性はあるということです。
教員が羨ましがられ、盗撮が賞賛される「SNSコミュニティー」
――学校内ではどのような被害がありますか。
まずは、「盗撮」。2023年7月に施行された「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」に該当するものとしては、階段を上っている時や着替え中などの盗撮が挙げられます。また、撮影罪には該当しないのですが、「太ももの隠し撮り」なども学校で見られる被害の1つです。
このほか、児童生徒のお弁当や体操服などの私物に体液をかける画像や動画、ディープフェイクの投稿による被害などがあります。
■盗撮および盗撮画像の投稿など
■児童生徒の私物に体液をかける画像や動画の撮影・投稿など
■ディープフェイクによる性的な画像や動画の作成・投稿など
私たちが見つけた被害画像や動画がどこの学校で撮影されたのか、被害者がどこの生徒なのかが特定できた場合は学校に連絡をしています。ただ、そうやって通報できるものは氷山の一角。性的コンテンツの販売プラットフォームでは、被害画像が「成人女性が同意の下で契約を結んで出演しているポルノ作品」と同じ棚に並べられ、売買されています。そのため、私たちが見つけた画像が被害画像なのか判断がつかないことも多いのです。
――教員の盗撮事件に注目が集まっていますが、学校現場での盗撮は多いのでしょうか。
私たちが把握する範囲では、教員を名乗る加害者も見かけますが、全体で見ると多いとは言えません。ただ、デジタル性暴力画像のコミュニティーでは、教員は「やりたい放題できるね」と羨ましがられるポジションとなっています。
SNSでは興味関心がある情報が集まるエコーチェンバー現象が起こりますが、デジタル性暴力画像のコミュニティーでもそれが発生しています。盗撮画像は“作品”と呼ばれ、投稿した人は称賛されますので、その中にいることで加害行為が正当化・助長される面があると思います。おそらく最初は盗撮画像を見る側で、そのうち「自分にも撮れる・売れるのでは?」と加害側になってしまうのでしょう。