その習い事は、誰のため?年間約1600時間の"放課後"を埋める弊害とは 忙しい小学生の週5日以上"習い事漬け"に警鐘
習い事は週に何日が適切なのか……という問いに対して、画一的な正解はない。子ども自らの意思で、とことん極めたい習い事が見つかるケースもあるからだ。
島根氏は、自身が運営する学童に通っていた小学生のエピソードを紹介してくれた。「以前、学童で企画した世界的なバレエダンサーのイベントに感銘を受け、『もっとやりたい』と自らバレエに専念する道を選んだ子がいました。彼女は学童を離れることになりましたが、小学生ながら将来の夢を見つけられたことにスタッフ一同大変喜びました」。
子どもの能力を伸ばす「遊び」とは
習い事で圧倒的な人気を誇る学習塾・くもん。その背景には、年々過熱する中学受験に対する保護者の焦りという側面もありそうだ。
「わが子の将来を心配するあまり、『勉強しないと落ちこぼれて将来大変なことになる』と、過剰なプレッシャーをかけてしまっている保護者も少なくないようです。その言葉自体は1つの真実かもしれませんが、子どもの人生は、中学受験や大学進学がすべてではありません」
島根氏によれば、子どもの自己コントロール能力は、時間をかけてゆっくりと発達していくものだという。「小学生の発達段階では、できなくて当たり前。それなのに親が『なんでできないの!』と叱ってばかりいては、子どもの自己肯定感は下がってしまいます。子どもの非認知能力を伸ばすには、自信をつけて自己肯定感を高めることが不可欠です」。
習い事以外で子どもの能力を伸ばす方法を尋ねると、「とっておきの遊びは『鬼ごっこ』」だという。
「鬼から逃げるためには、瞬時に頭の中で状況を判断し、体を巧みに動かして回避しなければなりません。走る、止まる、切り返すといった多様な動きによって、運動能力をバランスよく鍛えることができます。サッカーやバスケットボールなど、あらゆるスポーツの基礎となる動きが、鬼ごっこには凝縮されているのです。さらに友達と遊ぶ中で主体性や判断力、コミュニケーション力などさまざまな力を鍛えることができます」
習い事はタダというわけにはいかないが、鬼ごっこならばお金をかけずとも、仲間さえいればすぐできるのも魅力。鬼ごっこに限らず、家庭でも子どもの能力を伸ばす工夫を重ねたいところだ。最後に、島根氏はこう締めくくった。
「人間は、自分の中に眠る可能性の扉をほとんど開かずに、一生を終えてしまうといわれています。親御さんには、お子さんの扉を一枚でも多く開けるサポートをしてもらえたら。わが子には無限の可能性があると信じて、将来の人生設計の土台づくりを見据え、さまざまな体験の機会を与えてほしいと願っています」
子どもが自分で考え、判断できる「余白の時間」を大切にすること──。それが、子どもが自らの道を切り開いていく、本当の「生きる力」につながるはずだ。夏休みは絶好の棚卸しの機会。親子でじっくり話し合い、放課後時間の使い方を一度見直してみてはどうだろう。
(文:せきねみき、注記のない写真:JIRI / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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