その習い事は、誰のため?年間約1600時間の"放課後"を埋める弊害とは 忙しい小学生の週5日以上"習い事漬け"に警鐘
これは仕事に置き換えても同様のことが考えられる。仮に、始業から終業まで1時間刻みでやるべきことを細かく指示されたら「少しは自分のプランで自由にやらせてほしい」と言いたくもなるだろう。
「子どもも同じです。常に時間割に沿って動かされるのではなく、自分で次に何をするか考え、選択する自由が大事。その試行錯誤の繰り返しこそが、子どもの自己決定能力を育むのです」

東急キッズベースキャンプ 代表取締役社長、キッズコーチ協会 代表理事
1965年東京都目黒区生まれ。中央大学卒業。輸入雑貨事業や自然食事業などを経て、2003年エムアウトに入社。心理学に関わる事業開発を経験し、小1の壁の問題解決と非認知能力の教育を志し、2006年キッズベースキャンプを創業。民間学童保育のパイオニアとして業界を牽引。2008年12月には東急グループ入りし、東急グループの子育て支援事業の中核企業として展開を開始。民間学童保育協会、東京都学童保育協会で理事を務める。保育士資格保有
(写真:東急キッズベースキャンプ提供)
「楽しい」の裏にある、子どもの本音
2人の子を持つ筆者には苦い経験がある。下の子の出産との兼ね合いで、上の子の預け先を確保するために、さまざまな習い事をほぼ毎日入れていた時期があった。
本人がそこまで乗り気ではなく、「友達もまだやっているから」という理由で、なんとなく続けていた習い事は、やめるのにも一苦労した。こうした悩みは決して特別なものではないだろう。
「実は、子どもは親のことが好きであればあるほど、本心とはうらはらに遠慮してしまう傾向があります。体験教室に連れて行って『楽しかった?』と聞けば『楽しかった』と答えますし、やめるか続けるかを問えば『続ける』と言う。しかし、その返答が本音とは限らないのです」
前出のニフティキッズの調査では、習い事をしたことがある小中学生のうち、7割近くが「今までにやめたいと思った習い事がある」と回答している。習い事を続けるかやめるかを判断するには、何を基準にすればいいのだろうか。
「お子さんが心の底から楽しんでいるか、スキルが上達することにモチベーションを感じているか、しっかり見てあげることがポイントです。もし、友達の影響などで『ほかのことをやってみたい』と言い出したら、それも1つのサイン。既存の習い事からシフトする、スケジュールに余裕があるなら最初は並行して挑戦する、という選択肢を検討してもいいでしょう」
また、習い事を長く続けるとメダルやトロフィーがもらえるという理由から、なかなかやめられない、やめどきがわからなくなる子どももいると聞く。
「それは心理学でいうところの『外発的動機付け』にあたります。アメをもらえるから頑張る、という状態です。メダルやトロフィーがきっかけでも、その習い事が好きになり、自らやりたいと思う『内発的動機付け』に変われば理想的。しかしそうでなければ、私は早くやめて、本当にやってみたいことに時間を使うほうがよいと考えます」