〈インタビュー〉参院選の争点「働き方改革反対」は日本をダメにする。ワーク・ライフバランス社の小室淑恵社長に聞く
――内閣府の規制改革推進会議では今まさに、スタートアップ協会が労働時間規制の適用除外といった「柔軟な働き方」を要望し、検討が進められています。注目されるのが「もっと働きたい」という現場からの声が紹介されていることです。経営者のみならず、働き手も不便を感じている?
ある主張を通すときに、主張にとって都合のいい当事者の声を紹介することはよくある手法です。ホワイトカラー・エグゼンプションが国会で議論されたときもそうでした。
しかしながら実際のスタートアップ業界は「もっと長時間働きたい」人ばかりではなく、子育て女性もいますし、若い男性が長時間働く慣行が原因で離職している実態があります。こうした長時間働く風土がセクハラの原因となる、といった現実もあります。
3000社の企業に「働き方改革」のコンサルティングをしてきましたが、クライアント企業がコンサルに入ってほしいと指定するような部署には、「自分は長時間労働はとくに問題だと思っていないのに、なぜ労働時間を減らさないといけないんだ」と反発するメンバーがいます。
これまで長時間労働をしてきて「幸運にも」何も問題が起きなかった人は、時間外労働ができるという優位性を使って評価され、勝ち続けたいと考えるのも当然です。
医師の働き方の問題点
ただ、そういう主張をしている人の仕事内容を見ていくと、能力は高いのにそれに見合わない雑務まで一緒くたに引き受けていることが多くあります。時間があるがゆえに、仕事を切り分けずに川上から川下まで全部やっているんです。
それが起きている象徴的な例が医師です。
病院現場の働き方改革コンサルも数多く入ってきました。医師は長時間労働で大変だといわれますが、高度な手術ができる医師が看護師への指示を手書きで出していたり、カルテをファックスで送っていたりする。労働時間規制がしっかりしている国の医師は、長時間を要する手術であっても、難易度の高い手術を集中して執刀し、その前後の工程を切り分けて別の人が担当しています。
貴重な高度人材がそのスキルに特化できるよう仕事を切り分けていけば、時間に限りをつけて働くことができます。コンサル先の組織では、働き方を見直すワークショップを何度も行ううちにチーム内からやり方を変える意見が出て来て、新しい仕事の進め方に変わっていきます。そうして、1人当たりの労働時間を短縮しながらも仕事がきちんと終えられる体制が出来上がるのです。
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