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〈インタビュー〉参院選の争点「働き方改革反対」は日本をダメにする。ワーク・ライフバランス社の小室淑恵社長に聞く

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新経済連盟(代表理事・三木谷浩史楽天グループ社長)は、ホワイトカラーの労働者が裁量労働制や、休日・深夜の割増賃金が適用されない「高度プロフェッショナル制度」を選択できるようにすべきと提言する。

経済同友会(代表幹事・新浪剛史氏)も現状の労働時間規制を強く課題視しており、「どうすれば今までよりももっと働くことができるのか。一定の期間内で(柔軟に労働時間の)総量をみていく裁量が必要な職種もある」(2024年末の会見、新浪氏)としている。

この揺り戻しともいえる動きに対し、「最も日本経済を衰退させる無責任で浅はかな政策だ」として警鐘を鳴らすのが、「働き方改革」の第一人者として組織へのコンサルティングなどを行うワーク・ライフバランス社の小室淑恵社長だ。7月16日には、過労死の遺族や育児当事者らの団体とともに会見を開いた。

「働きたい人がもっと働く」ことのどこが問題なのか、小室氏に聞いた。

与党は確実な票田がほしい

――今回の参院選では、自民・公明と参政党が「働きたい人がもっと働けるようにすべき」という趣旨の公約を掲げています。2024年の自民党総裁選挙でも小泉進次郎氏など3人の候補者が同様の主張をしていました。「働き方改革」への揺り戻しともいえる動きが、なぜ今、表面化してきたのでしょうか。

与党は厳しい戦いを強いられる中で、確実な票田がほしい。そうなったとき、支持の約束と引き換えに一部の経営者らが要望する労働時間規制の緩和を打ち出したと考えるのが自然でしょう。

労働時間の規制緩和は、彼ら経営者の長年の悲願といえるからです。第2次安倍政権時の産業競争力会議では、(一部の条件を満たした高度な労働者を休日・深夜の割増賃金の適用除外とする)「ホワイトカラー・エグゼンプション」に近い制度の設立が検討され、国会に提出する一歩手前までいっていました。

この会議でよく出たのが、「このままの働き方では日本は負けてしまう」「アメリカのシリコンバレーでは夜通し働いている」という意見です。安倍元首相も何度かシリコンバレーに視察へ行き、どんどんこの考えに傾いていきました。

ただ、結果として2018年の国会で制定されたのは規制緩和とは真逆の、労働時間の上限を初めて法律で制定した「働き方改革関連法」でした。2014年9月から私が民間議員に任命され、長時間労働の是正を強く打ち出しました。

安倍さんも最初は腑に落ちていない様子でした。それでも引き下がらず、毎回毎回主張していき、とくに残業が大幅に減った企業では従業員の家庭で生まれる子どもの数が1.8倍になったというような事例も示しました。次第に味方をしてくれる人も増えてきました。その流れの中で起こったのが、2015年の(電通の新入社員だった)高橋まつりさんの過労自殺です。

こうした複合的な背景があり、結局、ホワイトカラー・エグゼンプションは実現しなかった。今回こそは実現したい、という強い思いを感じます。自民党は今回の選挙公約で「働きたい改革」と銘打っていますが、実際は経営者らによる「働かせたい改革」にほかなりません。

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