自由進度学習は一歩間違えるとただの「放任」に…質の高い学びの「肝」とは 教師の意図と支援が"真の学び"を支える力に

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そして最も重要なのが、「学習状況の把握」です。どこまで進んだかだけではなく、どのように考えたのか、なぜその方法を選んだのかといった“学びの過程”に注目することが求められます。ここに「形成的評価」が求められます。評価は結果を測るものだけではなく、学びのプロセスを支える道具でもあります。

未来に導く「伴走」が教師の大切な役割

そして、「フィードフォワード(feedforward)」ということも欠かせません。これは、過去や現在の結果を振り返るフィードバックとは異なり、これからどう学ぶか、次にどう進むかという未来に焦点を当てた支援です。子どもが次の学びをよりよくするために、どのような工夫や視点が必要なのかを共に考える、まさに伴走的な評価のあり方です。

このような未来志向の支援を可能にするのが、教師の「伴走」です。教師が先頭を走って引っ張るのではなく、子どものペースに合わせて声をかけ、ときには並走し、そしてときには背中をそっと押す。そんな関わり方が、学びの質を変えていきます。

「なぜそれを選んだの?」「次はどう進める?」という問いを通して、子ども自身が自分の学びを省察できるようにすること。これが、教師の本当の支援です。

自由進度学習は、決して子どもに丸投げする学びではありません。子どもの学びを深めていくために、教師の存在が問われます。

もちろん、すべての子にマンツーマンで寄り添うのは現実的ではありません。だからこそ、学びのサイクルをクラス全体で共有し、振り返りの機会をつくり、学び合う文化を育てることが「持続可能な自由進度学習」につながるのです。

「自由」とは、何もかもを好き勝手にやってよいということではありません。構造化された自由の中でこそ、子どもは自らの学びに責任を持ち、自律的に学習を進めていけるのです。教師の意図と支援があるからこそ、「自由」は「放任」ではなく、真の学びを支える力へと変わるのです。

(注記のない写真: buritora / PIXTA)

中部大学 現代教育学部 現代教育学科 准教授 樋口 万太郎
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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