自由進度学習は一歩間違えるとただの「放任」に…質の高い学びの「肝」とは 教師の意図と支援が"真の学び"を支える力に
学習者が知識をただ覚えるのではなく、つなげて構造化し、意味づけ、そして必要な場面で活用できる力。それを育てることこそが、自由進度学習の可能性なのです。
とはいえ、自由進度学習は魔法のような方法ではありません。「自由に進めていいよ」は、学びの自由を保障する言葉であると同時に、「放任」へと転じる危うさをはらんでいます。
たとえば、単元のプリントを配って「自由に進めていいよ」と言ったものの、子どもはただ順番に問題を解くだけ。教科書の「まとめ」や要点には触れないまま、進度だけが進んでいく。そこに本当の学びの深まりがあるかといえば、疑問が残ります。自由進度学習の実践を参観しているときによく見える光景です。さらに問題なのは、「できる子」が理解の浅いまま先へ進んでしまうケースです。一方、「わからない子」はどこでつまずいたかさえわからず、止まってしまう。これでは、「自由」はかえって学びの分断を生む結果になりかねません。
連続する思考の土台が「深い学び」につながる
例えば、3年生の小数の学習で「0.2+0.3」を扱うとき、理解してほしいのは「0.1が何個分か」という“単位”の考え方です。「0.2は0.1が2個、0.3は0.1が3個、だから0.5」といった構造的な理解が、次の「0.4−0.2」のひき算の学習にもつながります。さらに、2年生の「200+300」も、同じ発想で「100が2個と3個で5個、だから500」と考えています。つまり、学年をまたいで思考の土台は連続しているのです。自由進度であっても、この“学びのつながり”を子ども自身が意識できるようにすることこそが、教師の大切な役割です。
このような“学びのつながり”を意識しながら思考することが、「深い学び」を導くのです。単に「できた」かどうかではなく、どのように学んだのかが重要です。
つまり、自由進度学習では「自由に進めること」それ自体が目的ではなく、「どのように学ぶか」を子どもが意識できるように教師が支援する必要があります。
始める前に知っておきたい自由進度学習の「肝」
では、自由進度学習を放任で終わらせないためには、どのようなことが必要なのでしょうか。ここには、いくつかの「肝」があります。
まず大切なのが、「計画」です。見通しをもち、学習をデザインする力は、自由進度学習の要です。そのためには、「学びの手引き」や「めあて」といった道しるべが欠かせません。そこには「困ったら友達に相談する」「取り組みやすい場所で学ぶ」といった環境面の工夫に加え、「学びの深め方」といった学び方のヒントも含めておく必要があります。
次に重要なのが、「学習内容の自己決定」に潜む危うさへの配慮です。「難しそうだからやらない」「嫌いだから後回し」といった自己判断が積み重なると、苦手分野が放置され、学びが偏ってしまいます。自由進度であるからこそ、自己決定を尊重しつつ、判断の背景に問いを投げかけることが大切です。

















