学校の落雷事故に終止符を、「雷注意報で屋外活動は即中止」命を守る危機管理 「雨が止み雷鳴が遠くなればOK」は大間違い

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そして、落雷の兆候やそれに係る対応等として、「厚い黒雲が頭上に上がった際には、雷雲の接近に注意する」、「かすかでも雷鳴が聞こえる際には落雷の危険がある」、「落雷の危険がある場合には、すぐに安全な場所(鉄筋コンクリートの建物、自動車、バス、列車等の内部)に避難する」等を促している。

落雷の危険性を認識すること、事前に気象情報を確認すること、誰もが賛成する内容である。しかし、20年近くも前、最高裁判所が下した判決の内容と似たり寄ったりである。教育現場は、最高裁判所判決から何を学んだのか。文部科学省が改めて今回の通知を出さなければならなかったことに、落雷事故に対する危機管理の甘さが如実に表れている。

雷注意報が出たら「屋外での活動は一切中止」とすべし

では、学校・教員はどうすべきか。

検知器の設置等、さまざまな対応が検討されている。その中にあって最も効果的な方法は、気象庁が発令する「雷注意報」を基準とする方法である。雷注意報は、「落雷のほか、急な強い雨、竜巻等の突風、降ひょうといった積乱雲の発達に伴い発生する激しい気象現象による人や建物への被害が発生するおそれがあると予想したときに発表」されるものである(気象庁HP)。また落雷に関しては警報が存在せず、注意報が危険度MAXとなる。

雷注意報は、気象庁という専門機関が発令するものであり、最高裁判所判決が示唆する科学的知見として、教育現場が依拠すべき基準となり得る。こう指摘すると、「夏場を中心に雷注意報の発令頻度は高く、屋外での活動ができないではないか」という反論がきっと返ってくることであろう。

発令頻度を考えると、雷注意報を基準とするやり方は確かに「空振り」が多い。だが、ことは生徒の生命に関わる問題である。危機管理の肝要は「最悪の事態を想定する」ことにある。雷注意報が発令されたならば屋外での活動は一切中止とするべきだ

発令の頻度が高いことを踏まえても、生徒の生命・身体の安全を確保するという観点に立ち、雷注意報の発令を判断基準に据え、躊躇なく活動を中止するという姿勢が求められているのではないだろうか。

(注記のない写真:Getty Images DrAbbate)

執筆:淑徳大学総合福祉学部教授 坂田仰
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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