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環境負荷の小さい農業を広げたい。アグリ系ベンチャー「坂ノ途中」が目指すソーシャルインパクトの形

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坂ノ途中は、有機野菜など環境負荷の小さい栽培方法で育てた野菜を通販形式で販売 (写真:坂ノ途中)
生成AIの登場に加えて、金融引き締めによる資金調達の難しさ、人材獲得競争の激化……スタートアップをめぐる環境は大きく変化している。連載「すごいベンチャー」では、そうしたスタートアップの最新情報を定期的に発信。
ここでは、ユニークなビジネスモデルや先進的な技術を持つスタートアップを紹介。今回は2009年創業のアグリ系ベンチャー「坂ノ途中」を紹介する。
<基本データ>
[社 名]坂ノ途中
[設 立]2009年7月
[資本金]5000万円
[社員数]99人/201人
[代表者名]小野邦彦
[所在地]京都市南区

「社員数」は左側が役員を含む正社員の数、右側はさらに業務委託・アルバイト・副業者などを含んだ数。

有機野菜をサブスクスタイルで宅配する会社――。京都に本社を持つ「坂ノ途中」を、そう捉えている人もいるかもしれない。しかし、創業者の代表・小野邦彦氏は「確かに野菜をネット通販しているが、事業の根本はそこではない」と言う。

「“環境負担が小さい農業を広げる”のが、私たちのミッション。その方法のひとつとして宅配がある」(小野氏)

坂ノ途中は、小野氏が2009年に起ち上げたアグリ系ベンチャー企業だ。「100年先もつづく、農業を。」のビジョンを掲げて、有機農業に代表される、農薬や化学肥料に依存しない農業を推進している。社会問題の解決に影響を与える「ソーシャルインパクト」のベンチャーとしても知られる。

環境負荷が小さい農業を営める仕組みをつくる

環境負荷の小さい農業を、既存の伝統的な農家が踏み出すケースは少ない。手間とコストがかかるうえに、農協などに出荷するには不可欠な安定生産が難しいためだ。

一方で、脱サラなどをして農業の世界に入る新規就農者は有機野菜づくりなどに意欲的な人が多い。環境に対する意識が就農のモチベーションである場合が多く、そして付加価値の高い農産物をつくりたいと考える人が少なくない。

とはいえ、「やる気」だけでは、有機農業のハードルは下がらない。そもそも新規就農者は農業のノウハウを持たないうえ、土壌の良くない空き農地で就農するケースが多い。有機農業に踏み出すも、経営が成り立たず、数年で撤退する新規就農者はあとを立たない。

そんな彼らに坂ノ途中が伴走する。

まずは生産物の「出口」を用意。前出のように同社は1回あたり税込み2670円~の料金で、旬の野菜が自宅に届くサブスクスタイルを中心とした野菜の宅配サイトを運営している。会員数は現在、約1万2000件にも及び、全国に散らばる有機野菜農家から個性豊かな野菜などの農産物を集め、セット販売している。

それまで新規就農者を中心とした有機野菜農家は、販路がままならず、道の駅の直販所など、近隣地域に限られるのが現実だった。しかし全国400軒の農家が参画する宅配サイトのネットワークに入れば、販路が広がる。

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