「世界に羽ばたかない」大学でも人気の納得理由、地方の小規模大学が生き残る術 全国の学長が注目する学長・大森昭生氏に聞く

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① 地学一体の学びとは、地域と大学が一体となった学びのこと。以下のようなプログラムがある。

・KYOAI GLOCAL PROJECT
地元企業とプログラムを作成し、企業のミッションを海外で遂行する。海外で地元企業の知名度の高さに気づくこともあるという。
・グローカルセミナー
各コースの学生がチームになって地域課題を解決する必修授業。企業と組んで地元の特産品を売り出す。学生自身が企業を探し、仮想企業の立ち上げも行う。
・長期インターンシップ
地元企業や市役所等で4カ月間インターンシップを行う。
・学び支援
教員養成コースでは公立小学校に同大の学生の席が2つ用意され、毎日2人の学生が常駐。学期の終わりにはその小学校の先生が同大で振り返りの授業を行う。また、高校生の学び支援も行っている。
・行政による授業
前橋市や群馬県の職員が担当する講義がある
地域課題を解決する必修授業では、仮想企業を立ち上げて地元企業と商品開発を行う
「地域の孫になる」を念頭に地域の方々に寄り添いながら地域課題の解決を目指す共愛COCOという学生プロジェクト
地元企業や市役所などで行う長期インターンシップ。写真の続きを見る

② 学習成果の可視化では、さまざまな活動を通してどんな能力を伸ばしたか、学生はウェブ上のポートフォリオ「KYOAI Career Gate」に記録する。4年間の学修で身に付ける12の力に照らし合わせて自己評価を行うことで、自ら学修の成果を説明できるようになるという。URLを親に教えたり、履歴書に書くことも可能で、この仕組みを活用して地元企業への就職が決まった例もある。

③ ガバナンス改革の代表例は、スタッフ会議だ。学長や理事長だけでなく教員、専任職員、パート職員、委託職員など、学生と向き合うすべての教職員が参加する。総勢70名が集まるスタッフ会議について、大森氏はこう話す。

「教授会や事務会議もありますが、大学にとって大事なことはみんなで決めます。年2回開催し、1人ひとりが大学にコミットできるようビジョンづくりから一緒にやっていますが、文化づくりとしても重要だと考えています」

教職員全員が集まって行うスタッフ会議の様子

学生が参加する会議もある。そこではまずは職員が大学の財務状況を学生に説明し、そのうえでどうソリューションを作るかを話し合うのだという。

「不満を学生に言ってもらうスタイルは簡単ですが、学生も自分ごととして大学づくりに参加してもらいます。地方の小規模大学であることはネガティブな要素として捉えられがちですが、実はプラス要素なのです。向き合う地域が明確ですし、小規模大学はフラットな組織運営やスピーディな改革が可能なのはかなりの強みだと言えます」

現場の教職員みんなで決めた驚きの規則とは

学生確保のために行ったことは、ほかにもある。学びの専門がわかるようコース制を導入し、さらには英検2級・日商簿記2級を取得している学生は授業料4年間無料というカンフル剤も打った(現在は1年間だけ授業料無料)。

学びの質の向上にも努めた。入学定員をそれまでの250人から200人に下げて適正規模にした。それにより、教育の質が上がり、入学志願者が増えた。さらに、定員割れの時期に推薦入試の評定平均を3.5に設定した。

「当時は定員割れしている大学のレベルで評定平均を設定するとは何事だという声もありました。しかし、適当に入れて適当に卒業させてしまっては、地域の信頼は得られませんから。こうすることで入学者が減る可能性もありました。私学では入学者の減少は経営に直結しますから、『入学者が減って収入の一定割合を人件費が上回ったら人件費を抑える』という規程を作りました。これは理事会ではなく、現場の教職員がみんなで決めたこと。だからこそ、みんな必死に頑張ったのです」

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