人口の約10%、学校でどう教える?教科書でも言及増える性の多様性「LGBTQ+」教育 児童生徒に打ち明けられたら…教員の心構え

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これからの教育の指針として、多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包摂性(Inclusion)の頭文字を取ったDE&Iが注目を集めている。日本のLGBTQ+教育については、2017年の学習指導要領の改訂の際にはLGBTQ+に関する項目が盛り込まれることはなかったものの、教科書で性の多様性への言及が増えるなど、教育現場でのLGBTQ+に関する意識は少しずつ高まってきている。一方で、課題となっているのが、教職員のLGBTQ+に関する理解不足だ。2020年に発足した「NPO法人Proud Futures」(以下、Proud Futures)は、実現したい未来として「LGBTQ+の子ども・若者が安心な気持ちで、自信をもって、自由に生きられる社会」を掲げ、教職員向けのオンライン相談、性の多様性について伝える教材の提供、研修・講演活動などを行う。共同代表の小野アンリ氏と向坂あかね氏に同団体の取り組みについて聞いた。

日本のLGBTQ+に関する教育の現状

調査機関や調査方法によってデータにバラつきがあるが、日本におけるLGBTQ+の割合は、現在は人口の約10%前後で、左利きの割合とほぼ同じといわれている。

日本では、1990年代までは、LGBTQ+に代表される性的マイノリティに関する話題は学校教育ではほとんど触れられていなかった。しかし1990年代後半から2000年代初頭にかけ、LGBTQ+の人権をめぐる議論が欧米で進展する中で、市民団体やNPOなどが啓発活動を始めた。

教育現場では、2000年代に入ってから一部の自治体や学校が独自に取り組みを開始。2015年、文部科学省が「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」という通知を出し、性同一性障害(現在の用語では「性別不合」)を持つ児童生徒への配慮を求める初めての公式な指針を示した。これがLGBTQ+教育の公的枠組みの始まりと考えられている。また、2016年にはLGBTQ+生徒への対応を記した手引き「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」を発行している。

2017年には、「いじめ防止対策推進法」の運用の中で、性のあり方や性自認に基づく差別やいじめへの対策が明記され、教育現場での意識向上が促された。

同年の改訂から2025年の現在もなお、学習指導要領にはLGBTQ+に関する項目は盛り込まれていない。しかし、DE&Iが広がる社会状況から、2022年に12年ぶりに改訂された生徒指導提要に「性的マイノリティに関する課題と対応」が追加された。

さらに、2021年度から2024年度にかけ、小学校から高校までの保健体育をはじめとする教科書で、性の多様性についての記述が年々増えている。

日本の学校教育におけるLGBTQ+教育は、少しずつ進展しているものの、全国一律の取り組みには至っていないのが現状だ。「多くの教職員がLGBTQ+に関する十分な知識や指導経験を持たず対応に戸惑う」「カミングアウトした生徒がいじめや差別にあう」などが報告されており、LGBTQ+教育が単なる知識提供にとどまらず、インクルーシブな環境づくりにつながる実践が求められている。

LGBTQ+とユースワーク、共通の志を持つ二人が共同代表に

「Proud Futures」の共同代表の1人である小野アンリ氏は、自身がトランスジェンダーでノンバイナリーだという。

小野アンリ(おの・あんり)
NPO法人Proud Futures 共同代表
福岡で大学在学中に活動をスタートし、2012年に仲間と共に24歳以下のLGBTQ+の子ども・若者をサポートする団体FRENSを設立。元小学校教員。専門分野はLGBTQ+インクルーシブ教育。2020年Proud Futuresを発足。2021年から東京に拠点を移し、プライドハウス東京にてLGBTQ+ユースのサポート事業や多言語・多文化推進事業に携わる
(写真:本人提供)

「私は福岡市で育ったのですが、高校時代に『自分と同じようなつらい思いをする人をなくしたい。そのために学校教育に関わりたい』と思うようになりました。

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