
こうの史代『この世界の片隅に』(新装版) コアミックス
「人の気持ちになって考える」ことを、仕事でも日々の暮らしでも、私たちはしばしば求められる。これはマンガも同様で、登場人物への共感をいかに引き出すかが、作品の情感を決める。
本作は、広島市で育った少女・すずが隣の市である呉市に嫁ぐ物語だ。すずが結婚するのは昭和18(1943)年の12月、米国領アッツ島で初の玉砕があるなど、太平洋戦争での日本の敗色が濃くなっていた頃である。とはいえ、本作はいわゆる「反戦マンガ」ではない。絵を描くのが好きな少女が、それまで会ったこともなかった人々と「家族」になる物語だ。
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら