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〈今週のもう1冊〉『高宮麻綾の引継書』書評/仕事への姿勢やビジネスの論理、令和の兼業作家が描く仕事の美学

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高宮麻綾の引継書(城戸川りょう 著/文芸春秋/1760円/320ページ)
[著者プロフィル]城戸川りょう(きどかわ・りょう)/商社勤務。1992年生まれ。東京大学経済学部卒業。高校時代はフェンシング部で、インターハイ個人ベスト16入り。社会人3年目で小説を書き始める。『高宮麻綾の引継書』は、第31回松本清張賞の最終選考に残り、受賞を逃したものの出版が決まった。
さまざまな分野の専門家が、幅広い分野から厳選した書籍を紹介する。【土曜日更新】

「今の会社、辞めないでくださいね」

デビューしたばかりの新人作家が、編集者から最初に送られる言葉だという。小説家の多くは小説のことだけを考える人生に憧れるものだが、残念なことにそれで食っていけるのはごく一握りだ。兼業作家は珍しくないどころか、むしろ多数を占める。一方で、兼業をマイナスに捉えるのではなく、兼業だからこその経験をエッセンスとして作品に籠める作家もいる。本書には、それを強く感じた。

専門商社が舞台のビジネスミステリー

物語は、社内コンペを勝ち抜いた新規事業案が突然白紙撤回されてしまうことから始まる。会社都合の勝手な決定に、主人公の高宮麻綾は納得しない。上司がちらつかせる懐柔策をはねのけ、自らの事業案の実現に向けて突き進む。

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