「不登校」過去最多の日本、米国の心理カウンセラーが懸念する支援の問題点 背景の多くに「心理的問題」、必要な体制とは?

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アメリカで心理カウンセラーになるためには、大学院卒業後、3000時間のインターン時間を経て、2つの国家試験に合格する必要があります。インターン中は、知識や技能を高めるために、毎週スーパーバイザーと呼ばれる経験豊富なカウンセラーから指導や助言(スーパービジョン)を受けることが法律で義務づけられています。また国家試験も1回の受験で合格するのは難しく、難関試験とされています。

アメリカでは、心理カウンセラーは高い専門性を備えているスペシャリストとみなされているのです。日本と大きく違うのは、資格を有している者だけが携わることができる独占業務であり、精神科医と同じように心の病に関する診断を下すことができます。だから「子どもの心の問題が不登校の症状として表れたときには、専門家である心理カウンセラーに相談するのがいちばんよい」という判断になるわけです。

不登校の解決に当たっては、アメリカの心理カウンセラーは家庭に介入していくことが当たり前となっています。私も、不登校の子どもがクライアントの場合、親にも必ず週1回は心理教育のセッションを受けてもらうようにしています。なぜなら子どもの心の病の問題は、多くの場合が家庭環境や親子関係に起因しており、親にもコミットしてもらうことが欠かせないからです。

ただしカリフォルニア州の場合、12歳以上の子どもについては、カウンセリングを拒否する権利が法律で認められています。私自身、メンタルヘルス会社に勤務していた時期に1度、開業後にも1度拒否された経験があります。子どもの同意を得ることは、彼らの意思を尊重するとともに、カウンセリングを成功に導くためにも重要なことです。子ども自身が「今の状態を改善するためにカウンセリングを受けたい」と思わないと、効果的な支援を行うことは困難だからです。

「心理の資格制度」、日本の問題点とは?

――心理カウンセラーの立場から、日本の不登校支援の現状をどうご覧になっていますか。

まず大きな問題は、精神医療や心理学の分野が遅れていること。だから専門的な教育を受けておらず資格がない人でも心理カウンセラーを名乗れてしまうのでしょう。「自分の子どもの不登校問題を解決できたから、ほかの家庭の問題も解決できる」といった理由で、有料のカウンセリングサービスを開始するといったことが可能なわけです。

しかし無資格の人からカウンセリングを受けることは、医師免許を持っていない人に外科手術を委ねるようなもの。心の問題は命に関わることですから、大変危険です。日本では、不登校支援をうたう事業者のサービスを利用したところ、かえって子どもの状態が悪化したという方もいらっしゃるようですが、これも要因は誰でも不登校ビジネスを始められてしまう状況にあると思います。

とくにアプローチの仕方が画一的である不登校支援サービスは気がかりですね。ひとくちに不登校といっても、有効なアプローチ法は、子どもや家庭によって異なります。アメリカの心理カウンセラーは、大学院時代にさまざまな技法を学んでおり、実際の臨床の場面でも状況に応じて技法を使い分けることができます。1つのアプローチ方法を押し付ければ、合わないケースが出てくるのは当然のことです。

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