勉強が楽しくなった子も、「発達障害者100人の声を反映したノート」ヒットの訳 「まほらノート」子どもたちのため学習帳も開発

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「『まほらノート』の色を再現した背景色では、ストレス対処で反応しやすい前頭前野の領域の活性化が低く、読んでいるときの負担が少ない可能性が示唆されました。この実験では定型発達の成人を対象としているため、そこは考慮する必要がありますが、その後の研究結果を踏まえると、広く発達障害によって生じる読みの負担感を軽くするほか、感覚の過敏性に対しても応用が期待されるのではないかと考えています」

この研究の詳細は、すでに昨年度の日本ストレスマネジメント学会にて報告され、今年度中には海外誌への投稿が予定されている。また、大栗紙工との産学連携研究としては、川﨑氏と大阪医科薬科大学との共同研究において、同大LDセンターに通う児童を対象とした実践研究も基礎研究と並行して展開されており、こちらも分析を進めているという。学びのツールを選ぶ際のヒントとなるエビデンスが示されることを期待したい。

子どもたちの「学習したい気持ち」がそがれないように

「まほらゆったりつかう学習帳」と「まほらノート」は合わせて約14万冊も売れるヒット商品となったが、「ペイ・フォワードまほらノートプロジェクト」という寄付の仕組みも継続している。まずは必要な人に届けようと2011年11月から始めた取り組みだ。

これは、表紙にイラストが箔押しされた「ペイ・フォワードまほらノート」を1冊購入してもらうと、通常版の「まほらノート」が2冊、発達障害を中心とした障害のある人にプレゼントされるというもの。これまで放課後デイサービスや学校の支援級などに4200冊が届けられたという。

一方で、大栗氏の元には「子どもに合うノートを必死に探して『まほらノート』にたどりついたのに、学校から『みんなと同じノートを使ってください』と言われた」「通常学級では使わせてもらえない」といった声も保護者から多く寄せられているという。こうした声は、2024年の4月に合理的配慮が法律で義務化された後も届いている。

「もちろん先生方は授業のために準備をなさるわけですから、1人だけ違うものを使うというのはやりにくいのも理解できます。ただ、私たちはノートでしんどさが軽減されたり、快適に変わったりすることがあることを知ることができましたので、お子さんの学習したい気持ちがそがれないような方向に教育が進んでいくといいなと思っています」

ツールの選び方で、学びが劇的に変わることがある。違う選択肢があることを知るだけで、子どもの学びの可能性は大きく広がることだろう。

(文:吉田渓、編集部 佐藤ちひろ、写真:大栗紙工提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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