勉強が楽しくなった子も、「発達障害者100人の声を反映したノート」ヒットの訳 「まほらノート」子どもたちのため学習帳も開発

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「『今まではノートが取れなかったけど、スムーズに書けるようになった』という声をたくさんいただきました。『ノートが取れるようになったことで勉強が楽しくなった』『このノートを使って初めて、白いノートは眩しかったのだと気づいた』『ノートに書く際は力が入ってしまうけれど、まほらは書きやすく消しゴムで消しやすいので授業中に何度も手をマッサージする必要がない』といった声もいただいています」

小学生の保護者の要望を受けて「学習帳」も開発

「まほらノート」の発売直後から「小学生でも使えるマス目の学習帳を作ってほしい」という保護者たちの要望も多かったため、学習帳の開発も進めることになった。しかし、実現には3年かかったという。

「弊社は学習帳を作ったことがなかったため、サンプルを作っては放課後デイサービスに通う発達障害のお子さんたちに試してもらったのですが、あまり反応がよくなくて。一般的な学習帳はマス目の真ん中に十字の線が入っていますが、線が苦手な方にとって書きやすいマス目とはどんなものなのか、長らく答えが見つかりませんでした」

しかしある時、マス目の真ん中に点を1つ打ってみたら、それだけで上下左右がわかりやすくなることに気づいた。当事者の子どもたちに試してもらうと「時間をかけずに書ける」「力を入れずに書ける」と好評で、ようやく2023年12月に「まほらゆったりつかう学習帳」として発売することができたという。

「まほらゆったりつかう学習帳」はすべてセミB5サイズ(374円、税込み)

「まほらゆったりつかう学習帳」は、1列おきにあみかけを施した「方眼ノートタイプ」(10マスと15マス)と、読みがなスペースにあみかけを施した「かんじノートタイプ」をリリース。「まほらノート」と同じく国産の色上質紙を使い、3色の展開となっている。通級や支援級の児童生徒を中心に使われているという。

「まほらゆったりつかう学習帳」(ミント)の使用例。「方眼ノート」の10マス(写真左上)と15マス(写真右上)、「かんじノート」(写真下)

大学との「産学連携研究」も進行

「まほらノート」を使った研究も行われている。立命館大学 産業社会学部 教授の川﨑聡大氏を中心とした研究チームによる「背外側前頭前野や自律神経活動に及ぼす背景色・フォントの影響―学習活動に付随する精神的疲労軽減に向けた予備的検討―」だ。

「学習面における特性への配慮はさまざまありますが、実は推奨されている環境調整にはエビデンスがあるものは少ないんです。そこで、背景色とフォントの影響にフォーカスして検証したいと考え、大栗紙工さんにお願いして『まほらノート』のレモン色を背景色として使わせていただきました」と、川﨑氏は話す。

川﨑氏らは、「ツールによってディスレクシアの認知機能障害を直接なかったことにすることはできないが、読みによって生じるストレスの軽減には役立つのではないか」(川﨑氏)という仮説の下、実験を行っている。具体的には、読解におけるフォントと背景色の違いによって、背外側前頭前野と自律神経の働きがどう変化するかを調査した。その結果、フォントよりも背景色に有意な差が認められたという。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事