急勾配区間多い「都電荒川線」意外に大きな高低差 駅ごとにどのくらいの差があるのか調べてみた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

次の向原は約30mで、大塚駅前とは12mの高低差がある。王子駅前―飛鳥山間より1m高低差が大きく、この区間の大塚駅前から天祖神社付近までに62.8パーミルの区間最大の勾配がある。「おや、飛鳥山よりも1m高さがあるのに勾配が少し緩やかなのか」と思われるだろう。これは、一気に向原に上るのではなく、階段のように何度か勾配を登るためで、武蔵野台地が階段状の地形なのがわかる。

東池袋四丁目が約28m、都電雑司ヶ谷が約32mで鬼子母神前が約29mとなるが、都電雑司ヶ谷と鬼子母神前間は、停留場間が少し低く、アップダウンの地形となっており、最大勾配は54パーミルとなる。ただし、現在都市計画道路の整備中で、完成すると少し緩やかな勾配になる。

学習院下は約11mで、鬼子母神前との高低差は18mもあるが、停留場間500mを使って42.2パーミルの勾配としている。学習院下から鬼子母神前方向を見ると、長い坂を実感できる。

次の面影橋が約9m、終点の早稲田が約8mと、この付近は神田川の前身となる平川により浸食されたとされる。平川は大きな川でたびたび洪水をもたらしたが、江戸時代に徳川幕府が平川を改修し、現在の神田川に生まれ変わった。 

路面電車は人生のようだ

東京さくらトラムは1両編成のかわいい車両だが、急勾配も克服する高い性能を持っている。現在の車両は性能が良くなったが、吊りかけ駆動方式による電車時代は、坂道になるとモーターを唸らせながら、懸命に登っていった。人間が坂道になると息が荒くなるのと同じで、下り坂になると、慎重になる点も似ている。

路面電車は、人が歩く道と同じ標高を走り、登り坂も下り坂も、そして平坦な区間もある。まるで人生のようでもあり、最も親しみのわく乗り物に違いないだろう。

※ 標高に関しては、国土地理院GSI Mapsから得ましたが、測定場所により、多少の誤差があります。東京さくらトラム(都電荒川線)の勾配の数値は、東京都交通局に資料の提供、およびご教示をいただきました。
渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事