「不登校の子の保護者」4人に1人が離職・休職、「家庭でケアを丸抱え」の過酷 8割が仕事に影響、4割が収入減、精神不調も

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「不登校離職を防ぐためには、上司や同僚の理解が何より大切になります。時短勤務やテレワーク、介護休暇などの制度も、利用しやすい雰囲気がなければ使えません。実際、会社に理解がないため退職する保護者は多い。不登校の子を持つ社員から相談を受けたときに、『今はお子さん最優先で考えてください。制度の利用が必要なら遠慮なく申し出てください』と言える職場であれば、保護者は離職をしなくて済みます」(土橋氏)

同法人では、不登校離職の解決には企業の姿勢がカギを握ると考え、昨年には企業の人事担当や管理職を対象とした『不登校離職予防セミナー』を2回実施、企業規模を問わず計50社の参加があった。参加後、社内で不登校に関するアンケート調査をしようと検討を始めた企業もあるという。

「社会問題」という視点が弱い日本、学校ができることは?

不登校の子どもを持つ保護者へのアンケート調査については、オンラインフリースクール「SOZOWスクール小中等部」も2024年8~9月に実施している(有効回答数187名)。「不登校によって保護者に起きた変化」についての設問では、57.2%が「気分の落ち込み」、54.5%が「孤独を感じた」と答え、「仕事をやめざるを得なかった」という回答も18.7%に上った。先のNPO法人キーデザインによる実態調査と同様に、不登校の子どもを持つ保護者が、孤立や離職のリスクに直面している実態がここでも明らかになった。

関水徹平(せきみず・てっぺい)
明治学院大学社会学部社会福祉学科准教授
専門は福祉社会学。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。早稲田大学文学学術院助手、同非常勤講師、立正大学社会福祉学部准教授を経て、2023年より現職。主な著書に『「ひきこもり」経験の社会学』(2016年、左右社)
(写真:本人提供)

同調査の助言を担当した明治学院大学准教授の関水徹平氏は、不登校の子どもを持つ保護者が孤立や離職に追い込まれやすい要因を次のように分析する。

「保護者の多くは、子どもを学校に行かせるのは親の務めだという意識があり、それができていないことに対する恥の意識や責任感を強く感じがちです。そのため、周囲には相談しづらくなり、問題を家庭内で抱え込んでしまう傾向があります。外部のサポートを得ずに自分たちだけで問題に対応しようとすると、仕事を犠牲にしてでも子どもに寄り添わざるをえなくなり、それが離職率の高さにもつながっていると考えられます」

不登校の子どもを持つ保護者は、子どもへの精神的なケアと経済的な保障、自立のためのサポートをすべて自分たちだけで担わなければならない。さらには「このまま学校に行けない状態が続けば、この子は将来どうなるのだろう」といった不安とも闘うことになる。

「日本では不登校やひきこもりは、保護者が対応すべき家庭問題として捉えられており、社会が取り組む問題という視点が弱く、社会保障の仕組みも貧弱。一方、欧州の先進国では、社会として対応すべき社会問題の枠組みで扱われています。例えばドイツやスウェーデンでは、ひきこもりの子どもが一定の年齢を超えたときには、住宅費や生活費が公的に支給されます。少なくとも保護者は、経済的な負担からは解放されます」(関水氏)

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