「不登校の子の保護者」4人に1人が離職・休職、「家庭でケアを丸抱え」の過酷 8割が仕事に影響、4割が収入減、精神不調も

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「母親のほうが子どもと接する時間が圧倒的に長いため、子どもの表情や生活リズムの変化などに敏感です。一方、父親は1日のほとんどを外出しているため、子どもの状況を十分に把握できていない。このアンバランスさが、夫婦間のすれ違いを生む大きな要因となっています。パートナーに相談できず、周囲にも悩みを打ち明けられる人がいなければ、母親は孤立を深めていきます。またシングル家庭は、そもそも相談できるパートナーが家庭内にいません。孤立によってメンタルが不安定になれば、夫婦関係や親子関係はさらに難しいものになっていきます。孤立をどう防ぐかが、非常に重要になります」(土橋氏)

離職や休職をしなくてすむ「職場環境」も必要

土橋氏は、保護者の孤立を防ぐためには、第三者とのつながりが重要だと強調する。文部科学省も、不登校の子どもやその保護者が孤立している現状を受け、相談支援体制を強化するために200自治体を対象に補助を行うことを打ち出している。

土橋優平(どばし・ゆうへい)
NPO法人キーデザイン代表理事
1993年生まれ、2016年にNPO法人キーデザインを設立。栃木県内で2つのフリースクールをオープン、全国約4500名の保護者が登録する無料LINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」を運営するなど、子どもとその家族の支援に力を入れる。2021年下野新聞社「とちぎ次世代の力大賞」奨励賞、栃木県経済同友会「社会貢献活動賞」を受賞
(写真:本人提供)

「自治体はアドバイスをするのではなく、保護者支援という視点で取り組んでいただけるとうれしいです。例えば、不登校の子を持つ親同士が話せる場をつくることは1つの手立てとなるでしょう。親が外とつながることは、結果的に子どもが社会とつながるきっかけになります」(土橋氏)

一方、「今後は、働く保護者が離職や休職をしなくてすむ職場環境をつくることも必要になる」と土橋氏は考えている。

子どものためよかれと思って離職をしても、それが最善の選択とは限らないからだ。土橋氏は不登校離職の経験者にヒアリングした際に、「普通の大人との会話がしたかった」という声を多く聞いたという。家の中で1人で子どもと向き合い、声かけ1つにも気を遣い続ける毎日。だが1日の大半を子どものサポートに費やしても、一朝一夕に状況が好転することはない。さらに離職をすれば、社会との大切な接点がなくなり、職場の同僚と何気ない雑談を交わすといった機会さえ失われることになる。

同法人では、11月調査において、退職を踏みとどまった保護者に自由記述で回答を求めたところ、「物理的に子どもと離れる時間があったこと、職場で不登校について話せたことが、大きな支えになった」「仕事に行くことで子どものことばかり考える生活から抜け出すことができた」などの声が寄せられたという。職場は、悩みや苦しみを同僚に打ち明け、分かち合える居場所になりうるわけだ。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事