東京都にJR東、「サステナブル債」の野心的狙い 脱炭素、防災対策加速へ海外資金を導入

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また、「東京サステナビリティボンド・フレームワーク」と題した発行指針を策定し、格付け会社のムーディーズからその質について「非常に高い」(SQS2というグレード)というセカンドパーティーオピニオン(外部評価)を得た。こうしたことがユーロ建てサステナビリティボンドの起債に際して公的金融機関などを中心とした幅広い投資家の購入につながったという。

 

東京都は海外の投資家の感触を探るために、積極的に意見聴取の場を設けるとともに説明会も開催した。発行前の2024年2月から、発行後の11月に至るまで、その回数は40回近くにのぼるという。

JR東日本はEUタクソノミーに準拠

JR東日本の取り組みも注目される。同社は2024年8月にポンド建て(30年)およびユーロ建て(12年)のグリーンボンドを発行。発行総額は2273億円という大型の起債を成功させた。資金使途としては、新幹線の新型車両の導入、鉄道設備の老朽化対策、太陽光、風力発電など再生可能エネルギーの導入などだ。

新幹線の新型車両E8系。JR東日本のグリーンボンドの資金使途の一つになっている(撮影:尾形文繁)

この起債で共同主幹事を務めたBNPパリバ証券の上杉達郎・資本市場本部長によれば、「EUタクソノミーに適合しているとのセカンドパーティーオピニオンを取得していることが特筆される。ヨーロッパ企業でもまだ例が多くない中で、JR東日本のグリーンボンドは価値が高い」という。

JR東日本にとって海外の起債はどのような意味を持つのか。同社によれば、「外債は国内債よりも投資家層が厚く、市場規模もはるかに大きいため、1回の発行で多額の資金調達をすることが可能。今後もサステナビリティボンドやグリーンボンドを継続的に発行していきたい」(報道担当)という。

そして今後の継続的な発行を見据え、2024年12月に「サステナビリティファイナンス・フレームワーク」を改定。投資対象に廃プラスチックのリサイクルなどの「サーキュラーエコノミー」、植林や生物多様性に資するプロジェクトなど「ネイチャーポジティブ」といった分野を新たに追加した。また、フレームワーク自体をEUタクソノミーに準拠させることで、環境課題を重視する投資家の目を引きやすいようにした。

アメリカでトランプ氏が再び大統領に返り咲くなど、世界における環境や社会課題への対応の優先順位は以前より低くなっているとの見方もある。しかし、投資家の動向を見る限り、必ずしもその見方は当たらない。それだけに日本の自治体や企業が環境・社会分野でリーディングポジションを取ることの価値はむしろ高まっている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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