東京都にJR東、「サステナブル債」の野心的狙い 脱炭素、防災対策加速へ海外資金を導入

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東京都の同ボンドの発行額の規模は3億ユーロと大きくはない。ただ、公的金融機関など良質な投資家層による投資意欲の高さなどから見て、「資本市場では非常に注目度の高い案件だった」とシティグループ証券の真貝福太郎・投資銀行部門デット・キャピタル・マーケット本部シニア アソシエイトは説明する。シティグループ証券は「ストラクチャリングエージェント」と呼ばれる起債に際してのサポート役を務めた。

 

投資家の内訳では、中央銀行・公的機関が59%、アセットマネージャー25%、銀行13%などと幅広く、「投資家層の拡大といった狙いの一つは達成できた」(青木氏)。

また、3億ユーロの発行額に対して応募はその1.8倍に相当する5.4億ユーロに達し、金利水準については「ミッドスワップレート(買い手と売り手が提示するレートの中間値)プラス41ベーシスポイントという適正な水準になった」と真貝氏は説明する。

脱炭素・防災対策で海外投資家を呼び込む

東京都はこれまでグリーンボンドやソーシャルボンド市場の創設で、国内の自治体として先導的な役割を果たしてきた。グリーンボンドは2017年、ソーシャルボンドは2021年にそれぞれ初めて発行し、脱炭素化や無電柱化などといった環境・社会課題の推進財源としてきた。また、東京都の取り組みが呼び水となり、全国のほかの自治体でもグリーンボンドやソーシャルボンド発行の取り組みが広がっている。

東京都では「(国内市場の整備という)当初の目的は達成できた」(橋口牧子・財務局主計部公債課長)と考え、「次のステップとして海外投資家を呼び込みたい」(同氏)という。その第一弾となったのが今回のユーロ建てサステナビリティボンド(環境・社会複合型)の発行だった。

対象の事業としては、気候変動対策関連(ヒートアイランド現象に伴う暑熱対応のための遮熱性・保水性塗装の整備、公共住宅における太陽光パネルの設置など)、公共施設・インフラの防災対策(無電柱化の推進、河川施設の耐震・耐水化)、さらには教育環境の整備(特別支援学校の建設・改修)など幅広い分野にわたる。

そのため、都庁では「予算編成の段階で各局と調整し、どのような事業を対象とするか、また、今後どのような指標に基づいてレポートしていくかなどについて庁内で議論に時間をかけた」(橋口氏)。

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