「プラザ合意2.0」で円安是正というまさかの展開 円をはじめユーロや人民元にも悪い話ではない

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例えば、アメリカが通貨高の是正を、日本が通貨安の是正を希求した場合、互いの利害は一致する。日米だけではなく、ドイツを除けばG7は対中貿易赤字であるし、EU(欧州連合)レベルで見れば、やはり欧州全体としても対中貿易赤字を抱えている。

2024年下半期以降、ユーロ安も相応に深刻度を増しているので、通貨高の是正をアメリカが、通貨安の是正を日欧が求めるような構図は仕上がりやすいように思える。

ちなみに、名目実効相場で見れば、2022年1月対比で人民元は0~マイナス5%で穏当な通貨安が続く一方、ドルは優に10%を超えている。ユーロが実効相場で見ると落ち着いているのは対ドル、対スイスフランで下落する一方(両通貨のウエート合計で19.5%)、対人民元、対円で上昇していること(両通貨のウエート合計で23.3%)などが背景にありそうだ。

実体経済に目をやれば、対ドル相場でのユーロの続落が域内のインフレ率を押し上げることに関しECB(欧州中央銀行)を筆頭とする域内の当局者は愉快に思うまい。

アメリカの貿易赤字の半分が中国ともいえる現状

いずれにせよ、現状では「仮想敵国である中国が意図的に通貨安誘導を行い、アメリカを筆頭とする西側陣営が割を食っている」という構図は指摘できなくはない。かかる状況を踏まえ、西側陣営で結託してドル相場を低位誘導しようという発想はトランプ次期大統領らしい発想でもある。

アメリカの対中貿易赤字は、2023年時点で2787億ドル(GDP比で1%)と近年の両国関係を反映して13年ぶりの低水準まで縮小している。だが、それでもアメリカの貿易赤字(約1兆ドル、GDP比で3.8%)の約4割が中国という状況は目立つ。

対米貿易黒字の大きさに関し、中国に次いで大きいのがメキシコ(1614億ドル)、これにベトナム(1046億ドル)と続くが、これらの国は中国から部材を輸入し、アメリカへ輸出するという加工貿易の結果が含まれていることで知られる。当然、こうした貿易取引は第2次トランプ政権も問題視するところだ。

極端な話、メキシコやベトナムまで対中貿易の結果だと判断すれば、アメリカの貿易赤字の半分は中国という着想にも至る(実際は台湾や韓国、何よりアメリカの自動車企業による輸出も含むため、すべてが敵対視される筋合いではないが)。

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