横浜市「児童生徒26万人のビッグデータ」、企業や大学と連携して本格活用へ 「ラボとアカデミア」で新しい学びや環境を創造

学習ダッシュボードの導入で何が変わった?
今年6月から横浜市教育委員会が運用を開始した「横浜 St☆dy Navi(以下、スタディナビ)」は、いわゆる学習ダッシュボードだ。同事務局学校教育企画部教育課程推進室長の丹羽正昇氏は、「1人1台端末を使った新たな学びの創造」の推進と、同市が中期目標としている「教育DX」の観点から導入に至ったと話す。
「スタディナビ」では、児童生徒が入力したデータを教職員が自身の1人1台端末から即時に確認できる。例えば、毎朝の身体や心の調子を入力する健康観察、授業ごとの振り返りなどの授業アンケート、自学自習用の「はまっ子デジタル学習ドリル」などだ。このほか教職員は、横浜市独自の学力・学習状況調査の分析チャート、体力運動能力調査の結果なども見ることができる。

「今後は、図画工作や美術などで自分が作った作品や、音楽の時間に披露した歌や演奏を1人1台端末で録音・録画して残すなど、学習プロセスを振り返ることができるポートフォリオ機能も開放する予定です」
まだ導入して半年ほどだが、どのような活用の仕方が見られるのだろうか。

横浜市教育委員会事務局学校教育企画部教育課程推進室長
横浜市立小学校教諭、横浜市教育委員会事務局指導主事、東汲沢小学校校長を経て、2024年4月本職に就く。客観的なデータに基づいた児童生徒の理解や授業改善を図るため、学習支援システム「横浜 St☆dy Navi」を導入し、1人ひとりに応じた個別最適な指導の実現や健康観察の充実に向けてさまざまな施策を推進。また、児童生徒約26万人の教育ビッグデータを活用し、教員、大学、企業との共創によりデータ分析を行い、エビデンスに基づく学びの実現や、教育内容の充実に向けた具体的な枠組みとして、教職員、大学、企業が一堂に会する「横浜教育データサイエンス・ラボ」を開催
「まず健康観察については、スタディナビを使うことにより、端末で学校長をはじめ教職員全員が情報を共有できるので、児童生徒の不調の早期発見や対策が可能となりました。健康観察に応じない児童生徒も、それ自体が答えだと捉え、声かけなどの対応を取っています。職員室の大型モニターで児童生徒の状況を見える化し、養護教諭や支援員も含め情報把握ができるようにしている学校も。同じく授業アンケートやドリルの進捗状況についても教職員全員で情報共有できるため、児童生徒を真ん中においた議論や対応がより充実し、具体化していく効果もあると考えています」