あまりにどぎつい言葉が目に入り、思わず立ち止まった。「殺人魔・全斗煥(チョンドゥファン)」。
10年前の5月、韓国南部・光州(クァンジュ)市を訪れたときのことだ。快晴の陽光に当てられた芝生の青が映えている広場に浮かんだ、段ボールに手書きの文字が異様に見えた。段ボールを持っていた女性に問うた。「元大統領は殺人魔ですか」。
1980年5月18日、全斗煥の軍事政権に対し、光州市を中心とした市民が民主化を求めて蜂起した。韓国現代史上、最大の汚点ともされる光州事件である。死者は軍発表で144人となっているが、これより多いとされる。女性はこの事件の犠牲者の遺族だった。
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