大阪府教育長・水野達朗「小中高の学びに一本筋を通したい」、入試改革の真意 「不登校や中退」「ICT活用」の課題解決にも意欲

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また、大阪府には「入学を志願する者の数が3年連続して定員に満たない高等学校で、その後も改善する見込みがないと認められるものは、再編整備の対象とする」という条例があります。ここは多くのご意見をいただく点でもあるのですが、今年度も条例に基づき2校の閉校を決断しました。地域感情としてスッと受け止められないのも理解していますが、校舎の建て替えコストなども考えると、選択と集中で予算を当てて設備を整えたほうが子どものためになるのではという視点も必要でしょう。

もちろん、公立高校はセーフティネットの役割もありますから、単純に合理的な閉校をすればよいとは思っていません。教育長としては子どもたちの教育機会を確保するマネジメントに努めていきます。

「高校入試を変えないと中学校の学びを変えられない」

――今年8月に大阪府学校教育審議会(以下、学教審)が府立高校の入学者選抜制度の改革案を答申しました。この内容はどう捉えていますか。

私は大東市教育長時代からずっと、「高校入試を変えないと中学校の学びは変えられない」と強く思っていました。例えば近年、小学校では探究型学習が推進されています。市教育長としては中学校でも探究型学習を進めたかったのですが、取り組み始めたとしても保護者から「高校入試に役立つ学び」が求められ、どうしても知識詰め込み型に戻ってしまうんですね。だからこそ、高校入試を変える必要があると考えていました。

そうした思いの中、府教育長に就任したことで高校入試にアプローチできるようになったわけです。小中学校は市町村が、高校は府が所管しているので学びが分断されがちですが、市町村教育長をしていた私が府教育長になったからこそ、大阪府として小中高の学びに一本筋を通したい。実はここが府教育長として一番やりたいことなのです。

入試改革は中学校現場へのメッセージになりますから、例えば学教審の議論にも出てきた「思考力を問う作問」の研究は進めていきたいです。ただ、採点が難しくなるので議論は必要でしょう。

答申にあった「アドミッションポリシー選抜枠(仮称)」も、受験の形を変える1つの施策だと思っています。例えば、世界で輝く人材がほしいなら英語の配点を3倍にするとか、高校生活で何を成し遂げたいかという野望を英語で語らせるとか、多様な入試の形態があってもいいと思うのです。

※ 募集定員の一定割合を、その学校が具体的に求める生徒像に合った生徒を優先的に合格とする選抜制度案。

――学教審の答申の1つに、入試日程の前倒し案があります。

これまで大阪府の高校入試は、私立の入試、公立の特別選抜、公立の一般選抜という順番で行われていました。公立の一般選抜は卒業式の手前で行われ、合格発表は卒業式後。そこで公立の特別選抜と一般選抜を一本化し、時期を早めて選抜を行うという提案をいただきました。

この案のメリットは、中学生が合格発表から卒業式までの期間、入試にとらわれずに残りの中学生活を過ごせること。高校からの課題に取り組んだり、中学3年間を振り返ったりすることも可能になるでしょう。高校は中学校と連携して配慮の必要な生徒の情報を共有してもらうことができます。「入試が早く終わったら子どもが勉強しなくなる」という意見もあるため丁寧な議論は必要ですが、私としては前向きに捉えています。

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