その社名から分かるように、当社は極小軸受を主力とする会社だが、TOBによって傘下に“異色”の企業を収め、多彩な展開をみせている。電算機周辺の端末器やプリンタ、精密制御モータなどメカトロニクス分野に手を広げたかと思うと呉服のかねもりを買収するなど、意表を突く経営で注目される。平均的日本の経営者のワクをはみ出し、アメリカ型合理主義に立脚する高橋哲学の真髄は何か。
上場したからには高成長・高株価に
――近年、ミネベアは積極的にTOBをされていますが、その基本的理念はなんですか。
個人会社は利益さえ出ていれば問題がないわけです。従業員は自分の会社が儲かっていれば安心して、その会社に帰属する。銀行も取引先も安心してお付き合いくださる。
ところが、株式をいったん公開したとなると、株主の期待がありますから、やはり株価が上がるように経営しなければならない。株価の上がる大原則は会社が成長し続けることで、いま利益が上がっているから、財務内容がいいからということでは決してない。
ですから、我々もミネベアを中心にして、グループで成長政策をとってきたわけです。TOBはその一環ですし、一月一日からは傘下のメーカーの販売会社を全部合併して、株式会社NMBをつくりました。いままで各社がバラバラであったものが、今度は実体的に一緒になったわけです。営業権は企業にとって一番大事ですから、これが一体化されたことで企業の力も強くなり、大きく成長していくことができる。その成果は五七年九月期のグループ全体の経営利益一〇〇億円ということで、問いたいと思います。
日本ではTOBは異端視されていますが、そう考えるのは、いままでの体制を維持したいと思っている人々が作ってきた神話ですね。原理はやはり「時代の論理」に従って動きます。
――TOBされた会社はその事業の将来性を買ってのことですか。
そんな単純なものではない。なかなか分かってもらえないが、ビジネスは一般論でいっては意味がない。例えばアメリカは不景気である――一般論としてはその通りでしょうが、全体は我々にとってなんら意味がない。個々のビジネスこそ大事です。GMは悪い、クライスラーはつぶれそうだ――それは事実ですが、反面でアメリカのコンピュータ周辺機器業界は大変な好況で、みんなビジネスの拡大に備えて張り切っています。またレストランやビジネスホテルも不景気だが、しかし、あるレストランは立派に経営している。全体は意味がない。個々のビジネスが大事なんです。
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