『ジャパン・アズ・ナンバーワン』エズラ・ヴォーゲル氏を悼む 2019年のインタビューを再録

✎ 1〜 ✎ 21 ✎ 22 ✎ 23 ✎ 24
拡大
縮小

2020年12月20日、知日派社会学者のエズラ・ヴォーゲル氏が亡くなった。過去のインタビューを再掲する。

Ezra Feivel Vogel●1930年生まれ。67年から2000年まで米ハーバード大学教授。専門は東アジア研究。79年刊の『ジャパン・アズ・ナンバーワン』がベストセラーに。写真は2019年11月(撮影:今井康一) 

特集「覧古考新」の他の記事を読む

米ハーバード大学名誉教授のエズラ・ヴォーゲル氏が亡くなった。享年90歳。1979年のベストセラー『ジャパン・アズ・ナンバーワン』で日本の高度経済成長の要因を描き、日本と中国の研究で世界的な評価を得ているヴォ―ゲル氏に『週刊東洋経済』は過去何度となくインタビューを行ってきた。
平成時代を政財の有識者が振り返る連載「平成経済の証言」では、2019年4月に登場、平成の30年の日本と世界を総括してもらった。全4回のインタビューを再録する。

第1回
日本の傲慢さが
長い停滞を招いた

『ジャパン・アズ・ナンバーワン』日本語版の序文で私は次のように書いた。

「日本人も傲慢の虜になる危険性はある」。

この本は実際、日本が米国を追い抜くとも世界一になるとも書いてはいない。米国の世論に根強くあった日本の実力を軽視する見方に対し、日本社会の強さを米国人向けにわかりやすく紹介するのが執筆の狙いだった。

私は社会学者としての立場から、日本人の文化や教育、企業制度や官僚制度などを概観して、社会構造としてよくできていると主張した。今でもその骨子は間違ってはいなかったと思っている。

だが強烈なタイトルに目を奪われた日本人は、序文の警告に注意を払わなかった。ある日本の財界人は当時、米国から学ぶべきことは何もない、と平然と言ってきた。1980年代に会った別の日本の証券会社の幹部も傲慢な応対ぶりだった。円高ドル安と大規模な金融緩和を好機に、外国で土地や株を買いあさった。かつては非常に謙虚だった日本人の性格が変わってしまったかに見えた。ハーバード大学で同僚だったエドウィン・O・ライシャワー氏が冗談めかして「この本は米国では必読書だ。だが日本では発禁にするべきだ」と言ったのは的を射ていた。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
覧古考新
「今の日本は日満議定書における満州のようなもの」
1984年6月9日号、6月23日号より
1953年のロングインタビュー
1984年に小倉昌男社長が語った「将来は流通業」
「客から仕様の注文があったら、もう遅い」
ホンダ創業者が1954年に語った独自の哲学
松下幸之助氏と永野重雄氏の1969年新春対談
1983年8月27日号で語ったサントリーの生き方
1958年5月24日号で語った廉売合戦への危惧
4男・渋沢秀雄氏が語った大実業家の素顔(上)
4男・渋沢秀雄氏が語った大実業家の素顔(下)
「自由主義経済の経営理念」とは?
山下社長が1983年7月16日号で語ったこと
「菓子屋が政治的圧力を利用して商売できる時代ではない」
1970年2月28号で語った「東京進出作戦」
1953年9月19日号で語ったドイツとの比較
1965年5月1日号「この人にこの問いを」
日本のハンバーガー文化はここから生まれた
1977年に堺屋太一氏が描いた「組織と個人」
稲葉清右衛門「ついてこれない人はやめてもらって結構」
1985年、ファナック社長が語っていたこと
1988年に語った「ヒューマン・ルネッサンス」の経営
ラストバンカー西川善文氏を悼む
過去のインタビューを再掲
東大特別栄誉教授・小柴昌俊氏を悼む
2008年の『長老の智慧』インタビューを再掲
『ジャパン・アズ・ナンバーワン』エズラ・ヴォーゲル氏を悼む
2019年のインタビューを再録
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内